「良い大学に行き、良い会社に」
が必ずしも正解ではない
工業高校生は全体として6割が就職し、4割が進学していく。国家資格の取得を積極的に勧め、中には社会人でも合格率の低い資格を取る生徒もいる。実習を少人数で行うなど教員と生徒の関係が密となるため、進路指導でミスマッチが起きにくく、就職先での定着度が高い傾向にある。20年度のデータでは、卒後3年以内の離職率は高卒全体が39.5%であるのに対して工業高校生は16.3%と低い(全国工業高等学校長協会調べ)。机上の勉強よりも実学が勝っていると言えそうだ。
電気設備や土木などの現業職、製造現場の人手不足もあって工業高校への求人は大幅に増えている。平均すれば高卒と大卒の収入には一定の差は生じるものの、高卒の初任給は上がる傾向にあり大卒より好待遇なケースもあるという。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」(2023年)から、決まって支給される給与と賞与の合計を年収として見てみると高卒の「製造業」は年収476万円で、大卒の「宿泊・飲食サービス業」(年収455万円)を上回る。いわゆる「良い大学に行き、良い会社に就職」が必ずしも正解ではない。
公教育で工業を教える意義について、全国工業高等学校長協会理事長の守屋文俊さんはこう語る。
「モノづくりに楽しさを見出し、将来の目標を見つけた生徒の多くが大きく力を伸ばしていきます。いかに生徒が夢中になれるものを見つけられるか、学ぶ楽しさを教え、生徒の可能性を引き出し、社会に送り出す。工業高校には日本の社会に必要な人材を育て輩出していく役割があり、それを守っていかなければなりません」
工業高校生がいなければ、日本のモノづくりや建設業の現場は立ち行かなくなるだろう。社会の根幹を担う人材を育成している工業高校の存在に、改めて目を向けたい。