2024年10月7日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年7月9日

 フィナンシャル・タイムズ(FT)紙のヒル中華圏特派員が、頼清徳総統の台湾軍設立100周年での演説を取り上げ、台湾軍は装備等の近代化だけでなく、国家、自由、民主主義のために戦うというアイデンティティを確立する必要があるとした、と解説している。要旨は次の通り。

台湾・高雄の軍事基地で訓練する台湾軍(ロイター/アフロ)

 台湾の頼清徳総統は、陸軍軍官学校が中国の地に黄埔軍官学校として設立されて100周年の記念式典で演説、「新しい時代の課題と使命を理解すべきだ」、「最大の課題は、台湾海峡の現状を破壊し、台湾併合と中華民国の消滅を国家的大義と見なす中国の強力な台頭に対峙することだ」と述べ、「台湾軍の最高の任務は、台湾を守り、台湾海峡の平和と安定を維持するという重要な責任を勇敢に担うことだ」と付け加えた。

 頼総統の発言は、軍の改革を推進しようとする新政権の決意を強調するものだ。しかし、台湾軍の問題は、その曖昧なアイデンティティにも起因している。

 台湾軍は、孫文が中華民国の支配権をさまざまな軍閥から自らの国民党のために奪い取ろうとして1924年に、ソ連の支援を得て国民革命軍として創設された。国民革命軍は49年、中国の内戦に敗れた後、台湾に亡命し、現在の中華民国軍に改名した。

 蔡英文前総統は、予算の増額、予備役の改革、徴兵制の延長、訓練の改善といった改革に取り組んだが、軍に根付いた文化が、台湾の防衛ニーズに見合った近代的な軍隊への徹底的な変革を妨げてきた。

 軍の上層部の多くは、大中華圏ではなく台湾にのみ焦点を当てたアイデンティティを拒否し続けており、戦争になった場合の忠誠心に関して疑念を呼び起こしている。多くの基地には、蒋介石の記念碑や、30年代に日本から中国を守るために戦った戦いの記念碑が残されている。


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