2024年7月17日(水)

知っているようで知らない、知っておくべき電力問題

2024年7月17日

発電量を決めるのは利用率

 自然条件次第の太陽光、風力発電設備の年間を通した利用率は、地域により異なるが、日本では太陽光発電で15%程度。陸上風力発電設備で20%台、洋上風力で30%台だ。

 利用率が異なるので、同じ容量の設備でも同じ期間の発電量は異なる。100万kWの太陽光発電設備を原発1基分とする記事を時々見かけるが、同じ100万kWでも発電量は大きく異なる。100万kWの原発の利用率を80%とすると、年間の発電量は次の計算になる。

100万kW × 24時間/日 × 365日 × 80% = 70億800万kWh

 同じ設備容量の利用率15%の太陽光発電の発電量は、13億1400万kWhだ。原発1基分の発電量を太陽光発電設備で得るには5倍の500万kW以上の設備が必要になる。

 太陽光発電には利用率が低い問題に加え、設備の設置に大きな土地を必要とする問題もある。たとえば、1万kWの設備には約20ヘクタールの土地が必要だ。東京ドームの面積が約4.7ヘクタールなので、東京ドームにパネルを敷き詰めても、設備容量は2300kWだ。

 原子力発電所1基分の発電量を得るためには、約6300ヘクタールという山手線内の2倍弱の面積が必要になる計算だ。2023年12月末時点での、日本全国の10‌kW以上の業務用太陽光発電設備の導入量は約5800万kWある。それだけで10万ヘクタールを超える土地を利用している。

 太陽光発電設備は傾斜地、堤防などにも設置されており、火災あるいは防災上の問題も引き起こしている。地域によって住民による反対運動も活発化しており、設備には日照の良い広い土地が必要なことから、導入数量の増加が、今後政府の想定通り進むか疑問がある。

 再生可能エネルギー(再エネ)発電設備の登場により、エジソンの時代にはなかった発電方式も新たに登場しているが、依然として発電の大半を担っているのは、水蒸気を作りタービンを回す方式でエジソンの時代から変わっていない。エネルギー、発電では大きなイノベーションは過去200年間起きなかったと言える。

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