2024年11月23日(土)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2024年7月30日

 米ラジオ・フリー・アジア(RFA)の報道によると、ある地方の県(省や市よりも小さい行政単位)では、6月、教育当局がすべての教職員を対象に、学校の共産党事務所にパスポートを提出するようにという「通知文」が送られたという。

 同報道では、党事務所は学校に設置された新しい行政事務所とのことだが、詳細は不明だ。どの程度の規模で、どの省のどの県で行われているのかも把握できないので「真偽はわからないいう人もいますが、現に私の知り合いも何人もこの情報を知っていましたから、怖いなと思っています」とこの知人は語る。

コロナ禍から残る「出国規制」

 実は、この知人自身も、同様のことをコロナ禍で経験しており、筆者もその話を直に聞いたことがある。当時(21年後半)の取材メモを見返すと、次のように語っていた。

 「コロナが流行してからずっと、夏休みも毎朝スマホに職場からチェックが入ります。すぐに健康コードを見せて、問題ないことを報告しなければなりません。何時間も返信しないでいると、上層部に連絡が入り、おおごとになります。今、自宅なのか、どこにいるのかも連絡します。

 とくに厳しいのが教師、公務員、国有企業の社員です。省をまたぐ外出は、外出の理由と日程が厳格に管理されています。それだけでなく、海外旅行は絶対禁止。事務担当者にパスポートを提出させられている先生もいます」

 しかし、コロナ禍は落ち着き、23年から中国人の海外渡航は自由に行われているはずだ。日本などに来る団体旅行は本格的に開始されていないが、個人旅行は徐々に回復している。

 そのため、金銭面で問題がなければ、いつでも海外に行けるようになったと思っていたが、他の複数の中国人にも聞いてみたところ、「依然として教師、公務員、国有企業の社員などの一部には出国規制がかかっている」という。

 筆者のある知人は準公務員という立場だが、「海外に出国できるのは1年に2回まで。正当な理由がある場合のみ」と上司から言われたと話しており、「そういうふうに言われれば、パスポートを1回返してもらうだけでも緊張してしまう。つまり、行くなということですね」とあきらめ顔で話していた。


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