意識して育てたい「個数」の感覚
数の順番と同時に、数の感覚を育てていくうえで欠かせないのが「個数」の感覚です。個数とは、数を序列ではなく、量として捉える感覚を指します。
おはじきや石ころなどを「1つ」と言って「1個」取る、「2つ」と言ってまた「1個」取る、「3つ」と言ってもう「1個」取る……とやっていきます。当たり前のことですが、1つ取ったら手元に1個です。2つ目で2個になり、3つ目を取ったら手元には3個あります。
目で見て「3個ある」とか「5個ある」とわかり、5個のほうが多いと認識できるのは、大人にすれば簡単なことです。しかし、それは個数が「量」を示すということが理解できているからこその感覚で、その感覚が小さな子どもにはまだよくわかっていないことが多いのです。
以前、2年生の子を教えていたとき、「3+5」という繰り上がりのない単純な足し算で首をかしげられたことがあります。これは困ったことだと思いましたが、しばらく様子を見ているうちに理由がわかってきました。
その子にとって、3は3番目の数字という意味のようでした。1、2、3……と数えたときの3番目に来ることを示す、いわば記号です。もっといえば、3と5は3が前で5が後に来るという順番の感覚だけで数字を捉えていて、3と5のどちらが大きい量であるかがピンと来ていないのです。
「個数」=ボリューム感=量感
驚かれるかもしれませんが、低学年でこの状態に近い子は少なからずいますし、学年がもっと上がってもたまにいます。こうした子たちは、もちろん大きな数まで数えられるのですが、数をボリュームで捉える「量感」が育っていないのです。
このようなときに私たちがどんな教え方をするかというと、3を3個の物に、5を5個の物に、机の上で実物に置き換えて見せます。「ここに3個あって、ここに5個あったら、足し算だから、合わせると?」というふうに、3個や5個といった個数の感覚を徹底的に体感させます。
さらに、「3と5はどっちが多い?」と聞いて、数えた数字と実際の物の数の関係を個数の感覚として養っていきます。そして、数の「量感」を養っていきます。
この「量感」を小さい頃にたっぷり体感しているかどうかが、実は算数の得意不得意に深いところで影響を及ぼしています。