2024年11月22日(金)

食の「危険」情報の真実

2024年8月22日

世界から遅れ続ける接種率

 では今後、接種はどうなっていくのか。

 大阪大学大学院医学系研究科産婦人科学教室の八木麻未特任助教や上田豊講師らの研究グループは、約940万人の女性を対象に22年度までの生まれ年度ごとの累積接種率を推計した。その結果、公費助成で接種が進んだ接種世代(1994年度~99年度生まれ)は平均71.96%、積極的勧奨が中止になり、接種が激減した接種停止世代(2000年度~03年度生まれ)は4.62%、20年度から接種の個別案内を受けた世代(04年度~09年度)は16.16%、積極的勧奨が再開された世代(10年度生まれ)は2.83%となり、接種がほとんど進んでいない実態が改めて分かった。

 さらに、22年度と同様の接種状況が続くと仮定した場合の28年度時点の累積接種率を推計したところ、積極的勧奨が再開された世代(10年度以降生まれ)でも累積接種率は43.16%と見込まれ、半分以上の女性は未接種の状態が待ち受けていることが分かった。この研究結果は米医学誌「JAMA Network Open」(24年7月16日)に掲載された。

 上田講師は「このままだと日本の接種率はWHOの目標の半分にも届かないことが予想される。子宮頸がんはワクチンで予防できるのに、がんのリスクにさらされる女性たちが増えていくことをとても懸念している」とキャッチアップ接種の重要性を指摘している。

若い世代の動きも、いまだ続く「リスク」への声

 最近は、若い世代も危機意識をもち始めた。関西の医学生を中心に活動する学生団体「Vcan」は全国の中学、高校、大学に出かけてワクチン接種の意義などを解説する出前授業を行っている。これまでに約30校で1500人以上に授業を行った。

 7月9日には滋賀県知事の定例会見に同団体代表の大坪琉奈さんが出席し、接種の大切さを訴えた。こうした若い世代の活動を紹介するニュースが増えれば、キャッチアップ接種がもっと広く伝わるのではないか。ただ、こうしたワクチン接種を推進する活動にも批判的な声がSNS上では飛び交っているようだ(『「責任取れるのか?」HPVワクチンの啓発行う医学生らに攻撃…“キャッチアップ接種”期限迫る中「知らないまま後悔しないで!」と切なる訴え』)。

 批判の中に見られる「副反応が出たら責任をとるのか」という意見にもあるように、いまだにワクチンにまつわる負のイメージは強い。どんなワクチンでも副反応リスクがゼロとはならない。その意味でも諸症状で苦しむ女性たちへの補償はもっと進めても良いように思う。

 今後、日本で子宮頸がんの罹患や死亡が増えるかどうかは、空白の9年間に接種を逃した世代の接種率にかかっている。その意味で救済措置を伝えるメディアの責任は大きいといえそうだ。

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