ハリスとバイデンの比較
以上のような政策論争を中心とした討論が予想されるが、有権者はその内容よりも、ハリスがトランプの議論に素早く反論ないし再反論できるかに注目するだろう。というのは、有権者には、テレビ討論会でバイデンが犯した言い間違えや、もたもたした動作、声のトーンの弱さが、まだ強く印象に残っているからだ。今回の討論会で、有権者はまず、ハリスとバイデンを比較するのだ。
次に、ハリスがトランプの議論に対して、即座に切り返すことができれば、有権者はそのハリスの姿と能力が高く、健康でエネルギーに満ちた大統領像を引き出してくるだろう。
従って、討論会ではハリスが「俊敏な頭脳」を示し、「鋭い議論」でトランプを責められるのかが、極めて重要な要因になってくる。トランプがハリスのスピード感のある議論に対処できず、バイデンのようにもたつくと、トランプは自身の健康と年齢問題を浮き彫りにしてしまう。
ただここで大切なのは、同時にハリスは持ち前の「明るさ」や、「暖かい人間性」を見せる必要がある。これも、ハリスにとって不可欠な要因だ。
前で紹介した米紙ワシントン・ポスト、ABCニュースおよび調査会社イプソスの全国共同世論調査によれば、大統領として効果的に任務を遂行するための「メンタルの鋭さ」において、ハリスはトランプを9ポイント上回った。
また、エコノミストとユーガブの調査(8月25~27日実施)では、「ハリスの健康と年齢は、大統領としての義務を果たす能力にどのぐらい影響を与えるのか」という質問に対して、「ほとんど与えない」と「全く与えない」の合計が76%、「非常に与える」は8%であった。一方、トランプは「ほとんど与えない」と「全く与えない」の合算が55%、「非常に与える」が35%であった。つまり、「メンタルの鋭さ」や、健康と年齢において、ハリスは有利な立場に立っている。
同調査(9月1~3日実施)が9月10日のテレビ討論会の勝者を予想してもらったところ、42%がハリス、38%がトランプ、21%が「わからない」と回答した。仮に、ハリスが有権者の期待に応えることができれば、ハリス旋風は加速ないし持続することになる。逆に、トランプがハリスの反論と再反論を封じ込めれば、ハリス旋風は減速するかもしれない。