2024年11月22日(金)

田部康喜のTV読本

2024年10月12日

 同社のトップで最高経営責任者(CEO)のX氏とNO.2でエンジニアのY氏とのチャットのやり取りからも、中国の「公安」との関係が浮かびあがった。

X 昨日の販売プロジェクトの進捗報告は基本的に全て公安に関するものです。

Y 雲南省の公安当局にミャンマー軍のQB(情報)を紹介したところ、いい値段を提示してくれました。

 取材班は、i-SOON社がある上海のビルを訪れる。会社があった部屋は、もぬけのからで机に並んだPCが部屋のガラス越しに見えるだけだ。管理人によると、従業員たちが警察に捕まって営業ができない状態だという。

社会の分断を引き起こす

 中国が仕掛けている「認知戦」は、どのような影響を各国に与えているのか。

 アメリカ・バージニア州にあるセキュリティー会社・マンディアントのチーフアナリストである、ジョン・ハルクイスト氏は、人種差別や銃規制の問題など、アメリカが抱える問題に中国がその分断工作をしている、と分析している。

 「標的とする国に楔を打ち込むような問題を見つけて攻撃しています。(中国が)目指すのは政府やメディアが伝えることを信じさせずに、むしろ陰謀論や社会が分裂していると信じさせることです。デジタルを脱して現実を生み出そうとしているのです」と。

 台湾で昨年12月に起きた、インド人労働者を移民させることに反対する運動が起きた。この裏にも、中国の「認知戦」があったと推察できる。

 事件は大量の個人情報が漏洩した後に発生した。若い女性を中心として反対の集会が各地で開催された。集まった理由を聞くと、台湾のSNSである「OCARD」にあふれた投稿だった。

 インターネット上の世論操作を分析している調査機関・ダブルシンクラボは、共同研究の結果、ひとつの投稿にたどりついた。

 「インドから労働者を受けいれれば、台湾が性暴力の島になる」というものだった。反対集会の嵐が起きた3週間前にX(旧Twitter)に大量の投稿がなされ、反対運動が起き、それをウェブメディアが伝えた。複数のサイトで抗議集会の呼びかけが始まる。

 同調査機関は、一連の流れが中国による「認知戦」だった可能性が強いとみている。

 コメントの一部の用語が台湾では一般的ではなく、中国で使われているのが散見されたからだ。例えば、「盗難」は対話では使われず、それは中国で一般的である。台湾では「窃盗」を使う。日本語訳すると「頭が悪い」は、中国の用語で台湾では使われない。

処理水放出で起こした「認知戦」

 日本を標的にした「認知戦」の代表的な例が、東京電力福島第1原子力発電所(1F)からの処理水の海洋放出に関する、太平洋に広がる様子の動画を使ったフェイクの投稿である。この動画はそもそも原発事故が発生したときに、放射線がどのように広がっていくかのシミュレーションのものだ。それを処理水と偽ったのである。

 調査会社・JNIによると、最初の投稿はi-SOON文書でみつかったX(旧Twitter)のアカウントで、2018年12月から不信な動きを見せていた。2300回のリポストがなされ、表示件数は約90万回という膨大な数になった。

 しかも、拡散にかかわったアカウントの半数は、ポッド・アカウントつまり人を装っているが実態はプログラムで動いているものだ。


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