2024年11月5日(火)

モノ語り。

2024年11月3日

「その日のうちに食べてもらいたい」

 さて、出入橋きんつば屋の「きんつば」といえば、甘さ控えめの小豆ともちもちとした薄皮です。

 「他のお店のものよりも1割程度、砂糖を控えています。皮は小麦に水を混ぜただけです。だから保存が効かないので、その日のうちに食べてもらう必要があります。ただ、すぐに食べない場合は冷凍してもらえれば保存が効きます」

 白石さんは「父親から受け継いだ味を変えない」という思いで続けていますが、どうにもできないこともあります。

 「小豆はもちろん、砂糖や小麦の値段も上がっています。それでも20年間値上げしていません。消費税が上がるタイミングで値上げを検討しましたが、母親に反対されました」

出入橋きんつば屋「きんつば」 きんつばは、1個100円。店内に席もあり各種甘味を楽しむことができる

 お母さんは「お客様」を大事にする気持ちがとても強いのです。だから「子連れのお客様が来たら、おまけをあげてしまうこともよくあります」と、白石さんは笑います。お店の前で休んでいるお母さんに、きんつばを買いにきた男性が「休憩中、ごめんね」などと気軽に声をかける様子を見ても、このお店の「看板娘」という気がしてきます。

 出入橋で育った白石さん。小学校の同級生は、17人中16人がお店をやっていたそうで、今でもそれぞれの商売で頑張っているそうです。白石さんたちは商都・大阪の面目躍如を果たしているのです。夏季限定のかき氷で使う氷も、氷屋を営む同級生のお店から仕入れたものです。

 「出入」という言葉、私自身、とても大切にしています。先に「出す」、つまり自分から先に動くことで、後から「入ってくる」。この姿勢でいつも仕事に取り組んでいます。今でこそ景色は変わってしまいましたが、かつての「水の都」を想像しながら、大阪駅から出入橋の「きんつば屋」まで歩いてみてください。

出入橋きんつば屋 大阪市北区堂島3-4-10 06-6451-3819
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Wedge 2024年11月号より
民主主義は 人々を幸せにするのか?
民主主義は 人々を幸せにするのか?

「民主主義が危機に瀕している」といわれて久しい。11月に大統領選を控える米国では、選挙結果次第で「内戦」の再来が懸念されている。欧州では右派ポピュリズムが台頭し、世界では権威主義化する民主主義国も増えている。さらに、インターネットやSNS、そして、AIの爆発的な普及により、世の中には情報が溢れ、社会はより複雑化している。民主主義が様々な「脅威」に晒されている今、民主主義をどう守り、改革していくのか。その方向性を提示する。


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