2022年9月28日(水)

研究と本とわたし

2014年2月12日

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 大学2年の秋にこの理論を先輩から教えてもらって、木村先生が書かれた論文を読んだときには、まさに目から鱗が落ちるという感覚を味わいました。それが以降の私の研究者としての歩みに、多大な影響を及ぼしています。

――最後に、これから取り組まれる予定の研究テーマをお聞かせいただけますか?

斎藤氏:一つには、いろいろな文化を創り出した人間の知性や自意識といったもののDNA的な基盤を知りたい。また、骨などの形を決める遺伝子は、まだよくわかっていません。こうした部分は、発生学者が研究していますが、別の方法でできないかと考え、体中のCTスキャンを取り、それをDNAの研究と組み合わせるといったことをやろうとしています。

 もう一つは、今度新しく研究会を立ち上げる予定の、「DNAから神話へ」というテーマ。私は、子どもの頃から「古事記」が大好きなのですが、最近、出雲神話の舞台である出雲地方の人のDNAを調査したら、驚くべきことがわかりました。日本海側だし、おそらく朝鮮半島の人々と近くなるだろうと予想していたら、そうではなかった。それで、日本国内の多様性をくわしく調べれば、これまで指摘されなかった日本列島人の新しい移住のパターンが見つかるのではないかと考えています。ひょっとすると、戦後、柳田國男が提唱した「海上の道」が、彼が指摘したよりもっと古い時代になりますが、本当にあったということになるかもしれません。

 そのほか、文明の研究も若い頃からずっと興味のあるテーマです。いわゆる文科系の文字で書かれた歴史も、自然科学系である生命現象の過去も、いわば歴史です。このすべてを覆う歴史を表現するのに「歴誌」と名付けているのですが、これから多数の方面を横断していきたいと思って考察を進めています。

 読みたい本もたくさんありますけれども、今年は書く方にも力を注いでいきたいですね。

――長時間にわたり、興味深いお話をうかがいました。どうもありがとうございました。

斎藤成也(さいとう・なるや)
国立遺伝学研究所・集団遺伝学研究部門教授。東京大学大学院理学研究科人類学専攻修士課程修了後、米国テキサス大学ヒューストン校生物医科学大学院修了(Ph.D.)。近著に『DNAから見た日本人』『ダーウィン入門』(ともに、ちくま新書)、『ゲノム進化学入門』(共立出版)、『自然淘汰論から中立進化論へ―進化学のパラダイム変換』(NTT出版)、共著に『生物学者と仏教学者七つの対論』(ウェッジ)、編著に『進化学辞典』(共立出版)、『生物学辞典』(岩波書店)、『遺伝子図鑑』(悠書館)、『ゲノムはここまで解明された』(ウェッジ)などがある。


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