ジャーナリストのイェホル・ブレリアンは、一部のイギリス人が、移民に対する政府のリベラルすぎる公共政策に不満を抱いていると指摘する。そのためロシアは対英工作において「なぜ移民が必要なのか? 彼らのホテルや避難所、モスクを破壊する必要がある」と繰り返し扇動している。
特に、RTの宣伝担当者であるウラジーミル・コルニロフは、自身のテレグラム・チャンネルを使って、「今こそイギリスの国内問題を解決すべきであり、世界のあらゆる紛争に干渉すべき時ではない」という主張を広めていた。
親露派のブロガー、アナトリー・シャリーも同様の意見をブログで拡散している。彼は、「か弱い西側」は不法移民の問題を解決できず、ウクライナ支援など外国に目を向けている場合ではないと述べている。
さらにロシアの影響力工作では、移民対立を加速させるような、キリスト教徒とイスラム教徒の間の「宗教的対立」をも激化させようとしている。彼らの主張の一つは、文明間の対立がすでに進行中であり、イギリス政府はそれに対して何もできない、というものだ。
暴動の思想的背景にある「グレート・リプレイスメント」陰謀論
そして、国際メディアプラットフォームの一つである「オープン・デモクラシー」によれば、これらの移民問題や宗教対立について、第1章で紹介したグレート・リプレイスメント陰謀論のナラティブが利用されている。
この理論では、北半球の白人が南半球からの移民に「取って代わられ」ており、フェミニストたちが中絶や避妊によって出生率を抑制していると根拠なく主張している。このすべては、リベラルエリート、フェミニスト、ブラック・ライブズ・マターの活動家、LGBTQ+の人々、ユダヤ人を含む「文化的マルクス主義者」によって仕組まれている、とされている。
この「グレート・リプレイスメント」は、一般に「白人大虐殺」と呼ばれている。この「大虐殺」を打ち負かすために、この理論の信奉者である極右勢力は、純粋なエスノステート(民族国家)を生み出す内戦を引き起こしたいと考えている。彼らはその戦いを「エックスデー(X-day)」や「ブーガルー(第二次南北戦争を指すネットスラング由来の言葉)」と呼んでいる。