ヴァンスが28年の次期大統領選に出馬することは間違いない。しかし、ヴァンスはトランプのスーパースターに対する「ambiguous(相反する感情を持つ)」な感情にこの4年間注意しなければならないだろう。
若きワーキングマザー
トランプに尽くすレビット
重要ポストへの起用をめぐり、トランプの人選を疑問視する見方もある。例えば、司法長官指名を辞退したマット・ゲーツ氏や次期国防長官に指名された退役軍人でFOXニュース司会者のピート・ヘグセス氏は、女性をめぐる事件の疑惑が相次いで報じられている。
『The #MeToo Effect: What Happens When We Believe Women』(未邦訳)の著者でオハイオ州立大学のレイ・ギルモア名誉教授は「トランプは、自分が目立たないように、意図的に性的不品行の疑惑がある人を探し出しているかもしれない。そういう人を権力の座につけることで、自分の行動や世界観をノーマルに見せようとしている」と皮肉を込めて言う。
そうした中でホワイトハウスの大統領報道官に起用されたのが、27歳という若さのキャロライン・レビットだ。
彼女は「性的不品行で告発された『nominee(任命・指名された人)』本人らは、その告発を激しく否定している。トランプは現状を変えるべく、自分のアジェンダの遂行に役立つ優秀なアウトサイダーを選んでいる。最も重要なことはMAGAのアジェンダを脱線させようとする人を排除することだ」とトランプを全面的に支持している。
レビットは、人口が7000人ほどのニューハンプシャー州ロッキンガム郡アトキンソンという小さな町で生まれ、敬虔なカトリック信仰の家庭で育った。家族はアイスクリームショップと中古車販売を手掛けていた。マサチューセッツ州のカトリック系高校に通ったが、そこで宗教の教えと公職への献身を育んだと21年にポッドキャスト『ザ・カトリック・カレント』で語っている。彼女の倫理的価値観や人工中絶反対など社会問題に対する考え方は、カトリック信仰に基づいており、その流れから熱烈な共和党支持者になった。
大学はまた自分の州に戻り、セント・アンセルム大学に奨学金で通った。いわゆるリベラル・メディアと呼ばれる主流メディアに対して、大学時代から批判的で、大学新聞が16年の共和党大統領候補であったトランプについて、批判的な記事を書いたとき、編集部に抗議文を送った。
子どもの頃の夢は、テレビ・レポーターになることであったが、大学時代、テレビ局のインターンを経験したときに、リベラル・メディアが共和党のトランプを攻撃するのを目の当たりにして、その仕事ぶりに幻滅した。19年に大学を卒業すると同時にトランプ政権のホワイトハウスで、インターンシップを経験している。その後、〝偏向した主流メディア〟と戦うために報道官補まで上り詰めたのである。
レビットはバイデン政権について、ニューハンプシャー州ロンドンデリーでのイベントで受けたインタビューでこう語っている。
「この政権の政策は、Z世代のアメリカ人の生活をまったく手の届かないものにしている。Z世代の保守派の一人として、私の目的は、その真実を語り、人々を我々の保守側に引き込むことである」
トランプは20年の大統領選でバイデンに敗れたとき、「選挙は盗まれた」と繰り返し主張したが、レビットも「バイデンは絶対に合法的に、勝ったのではない」とツイートして、トランプの主張に賛同している。
