2025年3月17日(月)

デジタル時代の経営・安全保障学

2025年2月13日

 OpenAIは社名にオープンを謳っていながら、実際にはオープンではない企業だが、アルトマン最高経営責任者(CEO)は、今回のDeepSeekショックを受けて「個人的には我々は歴史の間違った側にいたと思うので、別のオープンソース戦略を考え出す必要がある」、DeepSeekについては「非常に優れたモデルだ」とした上で「我々はより良いモデルを生産するだろうが前年ほどのリードは維持できない」(1月31日、Raddit「Ask Me Anything」セッションより)とOpenAI内部で議論されていることを認めている。

 DeepSeekが大手企業の戦略を方針転換させたのだ。これは今後のAIの発展に大きな影響を及ぼすだろう。

AIを試す前に入念な調査を

 諜報機関の間では、AIは、それを開発した国のプロパガンダツールとして認識されている。学習データに何を使用したかによって回答が異なるのは自明だ。

 例えば、ほとんどのAIツールがその学習に使用しているインターネット上の百科事典と呼ばれる「Wikipedia」にも政治的偏向が見られるとの論文もある。また、DeepSeekのプライバシーポリシーには「当社がお客様から収集した個人情報は、お客様の居住国外にあるサーバーに保存されることがあります。当社は、収集した情報を中華人民共和国にある安全なサーバーに保存します」とある。

 ローマ時代の格言に「Caveat emptor(ケイビエット・エンプター)」という言葉がある。ラテン語で「買い手は注意せよ」という意味である。この格言は、買主は「ものを買う際には事前に十分な調査をしてから購入しなければならない。例え商品に問題があってもその責任は自分にある」という考えを表したものである。

 AIの利用は、個人情報の移転や機密情報の外部流出につながる恐れがあることを十分承知した上で、飛びつく前に十分な調査をしてからチャレンジすることをお勧めする。

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