想像するに、習近平あるいは中国を持ち上げるような彼の言動は押したり引いたり、関税などを梃に中国を揺さぶり、何等かの譲歩を引き出そうとする作戦の一環であろうが、米中関係を「競争」と捉え、危険に陥ることのないよう「ガードレール」を設けて関係を管理するというバイデン政権の消極的政策とは、彼の言動は異質なもののように思える。対中関係において何事かを達成したいという些か前のめりの姿勢が感じられなくもない。
だとすれば、問題は習近平の中国がどう出るかである。警戒感だけではないはずである。過去 8年の関税やハイテク規制による圧力に耐えた中国の強靭性に対する一定の確信もあって、トランプの思い通りには動かないかも知れない。気紛れなトランプを誰も止められないトランプ政権の破壊的な政策運営を、中国の自身の利益に利用する機会を探ることを試みるかも知れない。
習近平が仕掛ける罠
17年11月のトランプとの会談で習近平は「太平洋には中国と米国の両国を受け入れるだけの十分な大きさがある」と述べ(13年にはこの「新型大国関係」という概念をオバマに述べた)、太平洋を米国と中国それぞれの勢力圏に分割するような取引らしきことに言及したことがある。これは台湾海峡や南シナ海を含む我が国周辺地域に有害な変動をもたらす罠である。
来年の今頃までに生起して我々を驚かすかも知れないのは、アリソンの賭けとは異なり好ましいこととは限らない。トランプがこの種の罠に誘い込まれることのないよう警戒を要するであろう。