2025年3月31日(月)

古希バックパッカー海外放浪記

2025年2月23日

ヒンズー社会では結婚するにもバラモンの許可が必須

 12月4日。コーチンの旅行会社勤務の22歳のヒンズー女性によると、カースト上の身分は地元の町や村の地域共同体で管理して役所に届けるので変更は不可能。ヒンズーから改宗しても地域に居住する限り変更できない。

 地域共同体ではカースト上位の長老たちが寄り合いで祭事、農事など重要事項を決定する。そしてカースト制度を維持するために、重要な結婚の認可も寄り合いで決議される。こうしてヒンズー社会の根幹を成すカースト的秩序が維持される。

 異教徒との結婚や異なるカースト間の結婚は認められない。地域共同体の認可を下に地元警察署の所長が公式文書として結婚許可証を発行する制度なので、バラモン長老たちの同意が必須なのだという。

 ちなみに約10年前に筆者がインド北部で知り合った日本人女性とインド人青年のカップルは、地元共同体の認可が下りず苦慮していた。青年は地方の村落の出身で異教徒の外国人である日本女性と交際していること自体が地元民の反感を買ったようだ。とても長老たちの賛同は得られない状況だったらしい。結婚許可証がなければ日本でも婚姻関係が認められない。窮余の策として高額な弁護士費用を負担して裁判所に結婚許可申請することを検討していた。

ヒンズー至上主義の下での教育現場や職場における異教徒と女性への差別

 上記のイスラム教徒の女性研究者は、大学院で博士号を取得して同じ大学で既に10年近くの研究実績があるが、教授のポストは限りなく遠いという。 

 国公立大学ではBJP政権になり、過去10年に政府から任命された最高幹部はヒンズー至上主義者が大半で、次第に異教徒の研究者には不利な状況になってきたという。ヒンズー教では異教徒は下層カーストに位置付けられており、非ヒンズーは評価、昇進、予算配分などで差別されている。ヒンズー社会では伝統的に男尊女卑思想があり、イスラム教徒女性研究者である彼女は二重の差別を受けていると嘆いた。

 上記のコーチンの旅行会社勤務の女性は、大学で土木工学を専攻したが女子学生は現場実習に参加できず、代わりに製図作業を命じられた。就職しても女子は現場監督になれず、外部に触れない室内での製図などを担当することになる。将来を悲観した彼女は、専攻を土木工学から経済に変更した。彼女はヒンズー至上主義がインドを席捲すれば、ヒンズー女性も活躍の場が限定されると訴えた。

 モディ首相は、現代インド社会に適合するように行き過ぎたヒンズー至上主義を修正せざるを得ないだろうと、筆者は今回の南インド旅で感じた次第。

以上 次回に続く

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