アンサンブルを奏でる3姉妹
物語の舞台は高知の片田舎である。のぶ(今田)の家は「朝田石材店」を営んでいる。嵩(北村)は新聞記者だった父・清(二宮和也)が亡くなったので、母の登美子(松嶋菜々子)とともに、この町で医院を開いている伯父の柳井寛(竹野内豊)を頼ってやってきた。寛と妻の千代子(戸田菜穂)にこどもがなかったので、嵩の弟の千尋(中沢元紀)が養子として寛の家にいた。
のぶは朝田家の三人姉妹の長女。次女の蘭子役に河合優実(かわい・ゆうみ)、末っ子のメイコ役に原菜乃華(はら・なのか)が配されている。
ヒロインに抜擢された今田の内心をうかがうとすれば、妹ふたりの女優としてのキャリアは自分をしのいでいると意識していると考えるのが正しいのではないだろうか。
次女・蘭子役の河合優実は、ドラマ『不適切にもほどがある』(24年、TBS)において、不良がかっているが実は心根の優しい、昭和の高校生を演じて全国的に名前を知られるようになった。ドラマのみならず、映画においても今もっとも監督たちに起用されている女優である。
『愛なのに』(22年、城定秀夫監督)では、古本屋の主人である瀬戸康史に求愛を続ける女子高校生役。『あんのこと』(24年、入江悠監督)では母に虐待されて、買春行為をさせられ、いったんは立ち直るが再び落ちていく女性を演じた。他の作品も含めて数々の映画賞を獲得している。
末っ子・メイコ役の原菜乃華は、世界的に大ヒットしたアニメ映画『すずめの戸締り』(22年、新海誠監督)のヒロイン岩戸鈴芽(いわと・すずめ)役の声優を務めた。映画『ミステリと言う勿かれ』(23年、松山博昭監督)では、菅田将暉演じる事件の推理に才能を持った大学生を実家で起きた相続をめぐる事件に引き込んだ役が印象深い。
代表作をすでに持ちかつ演技力がある、ふたりの女優と三人姉妹となって、今田の演技がこれまで以上に花咲くだろうか。ドラマの展開とともに明らかになっていくだろう。
中園ミホは、いうまでもなく三姉妹の性格を書き分けて、三人によるアンサンブルを奏でている。次女・蘭子は、まじめな性格で、勉強ができたが家族の暮らしを思って郵便局で働いている。末っ子のメイコは勉強こそ得意ではないが、明るい性格で朝田家を支えている。
