まずは過去の思い込みを手放す「アンラーニング(学習棄却)」の実践のほか、自分に改善点がないかを冷静に考えること、失敗に慣れ、失敗を受け入れること、合理性にも限界があると考えることなどをあげる。その上で、現実と願望を区別し、柔軟な思考を手に入れることが重要だと指摘する。
こうした二刀流をバランスよく両立させて「運」を味方につけ、攻略法をあみだしていくことが人生を充実させる一つの方法であることを本書は教えてくれる。
ビジネスへの決断、反骨精神、情熱
二冊目は単身でアメリカに渡った後にソースビジネスで成功した吉田潤喜氏の半生を振り返った『でっかく、生きろ。世界をつかんだ男の「挑戦」と「恩返し」』(吉田潤喜 望月俊孝著、きずな出版) である。
アメリカを中心に世界で売れているヨシダ・グルメソースのことをご存じの方も多いだろう。一代で全米の小売店にソースをおいてもらえるほどビジネスを成功させた吉田潤喜氏の歩みと奮闘を描いた。アメリカを訪れるたびに各地のスーパーや量販店にヨシダソースが置いてあるのを見て、日本人として誇らしげに感じていたが、本書は吉田氏の若き日の貧乏時代からこれまでの活躍ぶりを紹介した。
全米のソース市場を席巻し、「ソース王」と呼ばれるまでになった吉田氏だが、初めて渡米した時の1969年、吉田氏は飛行機の中でずっと毛布をかぶり、客室乗務員と目をあわせられないほど自信のない青年だった。渡米後しばらくは不法滞在状態で、そうした中でも苦労して空手の道場を開く。
クリスマスプレゼントのお返しとして空手教室の生徒たちに贈ったソースが好評で、ビジネスを思い立つ。もともとは渡米前に母が営んでいた焼肉屋の特製手作りソースだった。
著者は、迷ったり悩んだり、リスクの分析などしていれば、ソース作りはしなかっただろうと振り返る。そしてこう記す。
反骨精神が旺盛なのも吉田氏の力である。ソースの材料である醤油は日本の大手メーカーから仕入れていたが、突如値上げを通告された。先方が吉田氏の会社をライバルとして意識した結果とみられたが、値上げをやめるよう懇願したにもかかわらず、担当者から「テリヤキ味が売れるのは、うちが何十年もかけてアメリカ人に浸透させてきたお陰ですよ。それを無視して、いい気にならないでください」と言い放たれた。これに吉田氏の闘志が燃え上がる。