2025年7月13日(日)

Wedge REPORT

2025年6月14日

 コメの価格高騰や供給不足が終わらない。小泉進次郎農林水産相は備蓄米の放出や輸入米入札の前倒しなど、様々な手を打つ。今後、旧態依然とした農業政策や産業構造も変える方針も掲げられているが、どのような手が打たれ、どう効果を及ぼすのかは未知数だ。

(masa44/gettyimages)

 日本の食生活や食料産業に密接にかかわるコメの今後は、日本社会のありようにもなってくる。そこには、政治や農業関連事業者、生産者だけでなく、私たち消費者の心構えも重要になるだろう。

 コメ産業の課題やコメという食料への考え方を指摘した記事5本をまとめた。

<目次>

〈解説〉日米関税交渉の焦点はトウモロコシか?トランプ政権が本当に欲しいもの、日本のコメ産業はピンチをチャンスに(2025年4月30日)

コメ価格が下がらないシンプルな理由、小泉進次郎が農相としての使命を果たすために必要な3つのこと(2025年5月23日)

<論点>コメ不足と価格高騰の中で回収・廃棄された「あきたこまち」…これってホントに妥当なの?(2025年4月24日)

これは暴動が起きるレベル…上がり続けるコメ価格、なぜ備蓄米放出でも下がらないのか?笑いが止まらない人たちがいる現実 (2025年5月2日)

コメ不足の中で「あきたこまち」を大量廃棄、基準値超と安全なコメの“ブレンド”は許されないのか?原発処理水の希釈は認められるのにこの違いは何か(2025年6月5日)

〈解説〉日米関税交渉の焦点はトウモロコシか?トランプ政権が本当に欲しいもの、日本のコメ産業はピンチをチャンスに

トランプ政権との関税交渉は今後、どうなるのか?(提供:Molly Riley/White House/ZUMA Press/アフロ)

 「コメが足らない、価格が高騰」という今回のコメ需給・価格の混乱は、アメリカの相互関税作戦にも力を貸してしまった感がする。「日本の米輸入関税率は700%」との発言は明らかな間違いであるし、「全世界へ相互関税」の導入は、これまで国際社会が進めてきた自由貿易体制を崩し、無秩序の混乱と腕力勝負へと導いてしまっている。

 4月7日の記事『「700%関税」なんて大間違い!それでも巧みなアメリカのディール、トランプ相互関税で日本のコメ輸出はどうなる?』において、アメリカ側の「日本のコメ関税率は700%」「日本への相互関税率は24%(ただし、実行まで90日間猶予する)」に関し、「コメは本命ではないかもしれない。アメリカの作戦は、脅しをベースとした譲歩を目指す要求だから、コメ以外の分野での要求に飛び火する可能性が大である」と記した。最近の報道ぶりでは、事態はそのような方向に進むような気がしている。

 世界規模で考えれば、米国最大の難敵・中国は、<譲歩はしない、高関税には、報復の高関税で対応する>であり、双方の応酬結果は農林水産物の貿易構造の変更に跳ね返り、各国に影響してくる……

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コメ価格が下がらないシンプルな理由、小泉進次郎が農相としての使命を果たすために必要な3つのこと

農林水産大臣に任命された小泉進次郎氏(ロイター/アフロ)

 江藤拓農林水産相が「私はコメを買ったことはありません。支援者の方がたくさんくださるのでまさに売るほどある」などの発言で5月21日に事実上更迭され、後任に小泉進次郎氏が任命された。

 小泉氏は、将来の総理として期待され、昨年9月の自民党総裁選にも出馬したが、雇用流動化を巡る発言などによって国民の評価が低下してしまった。小泉氏に対しては生煮え、準備不足との批判が付いて回り、他候補や野党から、「労働解雇規制を緩和する」という発言を〝首切り自由化政策〟などと攻撃され、失速した(これについては、本欄2024年9月13日「<検証>自民党総裁選候補の9人の経済政策、日本経済を救う尖ったアイデアは洗練されるのか」参照)。結果、小泉氏は、総裁選の第1回投票で3位に終わり、決選投票に残れなかった。

 小泉氏が、国民に関心の高いコメ価格高騰問題を解決すれば、国民の評価が回復することは間違いない。また、人気低迷に悩む石破茂内閣としても、政策面での評価を高め、選挙応援力で群を抜く小泉大臣の存在を参院選対策でも有効に活用できるだろう。しかし、そのためには、いくつかの〝壁〟が存在して……

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<論点>コメ不足と価格高騰の中で回収・廃棄された「あきたこまち」…これってホントに妥当なの?

(Toshie Kurosawa/gettyimages)

 コメ不足によるコメの価格高騰が続く中、有害なカドミウムの基準値を超えたコメが流通したとして、秋田県小坂町の農業組合法人が生産した「あきたこまち」の自主回収が行われている。検出された数値は高いもので基準値の2倍超だが、実は2010年以前の基準値ならば違反とならなかった数値で、当時なら問題なく食べていた。

 食品衛生法では有害物質の基準値超の食品は、回収・廃棄などの対応が求められる。15年前なら食べられたコメが回収・廃棄されるのはもったいない気もするが……。

 カドミウムは土壌や水など環境中に広く存在し、コメや野菜、肉、魚など多くの食品に含まれている。コメを主食とする日本人はカドミウムをコメから摂取する割合が最も多く、1日摂取量の4割はコメから摂取していると推定され……

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これは暴動が起きるレベル…上がり続けるコメ価格、なぜ備蓄米放出でも下がらないのか?笑いが止まらない人たちがいる現実

(Hakase_/gettyimages)

 コメの値上がりが止まらない。コメの仲介会社クリスタルライスのまとめによると、秋田あきたこまちや関東あきたこまち、関東コシヒカリの取引価格は前年同期の2倍以上となっている。政府備蓄米が放出されても値下がりする気配が見られない。スーパーで販売される精米価格も同様で、農林水産省の発表では、最高値の更新を続けている。

 一向に値下がりしない米価へ消費者の不満もさらに募っており、農水大臣が謝罪する事態にまでなっている。なぜ、コメの価格は下がらないのか。歪な農政や産業構造を表出させている。

 コメの価格が下がらない原因は、需給のタイト感が薄れていないからだ。需給状況が最も簡単にわかるのは民間在庫のデータを見ることで……

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コメ不足の中で「あきたこまち」を大量廃棄、基準値超と安全なコメの“ブレンド”は許されないのか?原発処理水の希釈は認められるのにこの違いは何か

(Hakase_/gettyimages)

 秋田県産のブランド米「あきたこまち」から食品衛生法で定める基準値を超えるカドミウムが検出され、数百トンにおよぶコメが廃棄処分となった。

 昨年から始まったコメ不足により価格が前年比で2倍以上という前代未聞のレベルまで高騰している中、基準値を超えたコメを正常なコメと混ぜてカドミウム濃度を下げれば安全であり、コメの供給に役立つのではないかという声もある。いわゆる希釈によるリスク管理である。

 しかし食品衛生法第6条は危害物質を含む食品は、販売・流通してはならないと定め、基準値を超過する食品が含まれていた時点で、その混合食品も基準不適合と判断される。例えば農薬やカビ毒で汚染した事故米を通常の米と混ぜて販売した2008年の三笠フーズ事件では、最終的に基準値以下の安全なコメでも違法とされ、厳しい処分が科され……

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