本当に困っている人を助け
自立できる社会を
コロナ禍で全国民一人当たり一律10万円の一時給付や高校無償化など、クレクレ有権者の要求に応えるため、日本の政治は困っていない国民にもバラマキを行ってきた。
バラマキを行うにはそれに見合った負担が不可避である。日本の全世代型社会保障もその例外ではなく、全世代型社会保障を支える財源として、政府も政治家も有識者も強調するのが、広く薄く全世代が負担するとされる消費税である。しかし、消費税は所得に対する消費税負担額の比率が低所得層ほど重いという意味で逆進的である。つまり、現役、高齢世帯問わず低所得層が支払った消費税が富裕な高齢者にも使われているということでもある。日本の現状は低所得層から高所得層にお金が流れる逆所得再分配の側面がある。本当に困っている人を助けることなくして、一体何のための政治であり、社会保障なのだろうか。
本当に困っている人を助けるには、所得だけを見ていては無理だ。所得は少ないが、多額の資産を保有している人もいるからだ。逆再分配を避け、本当に困窮している人を特定し、その困窮者に十分な給付を行うには、「所得」および「資産」を含めた国民の〝懐の実情〟を把握する必要がある。政治家の中には「応能負担」を主張する人もいる。しかし、これまでも「トーゴーサンピン」と揶揄されてきたように、会社員(10割)、自営業主(5割)、農業従事者(3割)、政治家(1割)の順に所得捕捉率が低くなっている現状があるため、「応能負担」を徹底したところで、結局、不公平は免れない。
これまでも所得や資産の透明化を図ろうとしてきていたが、その都度、プライバシー保護の名目や政治力の壁に阻まれてきた。
しかし、15年に施行されたマイナンバーはこうした状況を変える好機になり得る。現状でも、特定口座の配当と株式譲渡益はすべてマイナンバーで把握されており名寄せができる。さらに、所得・金融資産口座とマイナンバーを紐づけることで、資産があるのに所得が低い見せかけの低所得者が確実に排除され、真の困窮者を見出すことが可能となる。
そうしたうえで、均衡のとれた公平な税制などを図ったシャウプ勧告の理念に立ち返り、総合課税を徹底し、勤労所得に加え、年金収入や資産所得を原則課税とするなど課税ベースを拡大し、負の所得税と組み合わせることで、真に豊かな人にはより多く税を負担してもらい、貧困者には給付を行う税制とすべきだ。
今後も、異次元の少子化、高齢化が続き、経済成長が見込めない日本にあっては、余裕のある人も含めて給付を行う余地はない。「真に困っている人」だけを助け、そうした人たちが自立できる社会にしていかなければならない。それはやがて納税者を増やすことにもつながり、経済・社会にとっても好循環となるだろう。真の意味で「誰も取り残さない社会」を目指していくべきだ。
