2025年12月5日(金)

トランプ2.0

2025年7月25日

 フランスの研究機関「フランス国立科学研究センター」グループも、「人為的要因による気候変動が通常の降雨量を増大させ、被害を広げた可能性が大きい」とする調査結果を公表するとともに、「今回の大雨は気候の自然現象」だと一蹴するトランプ氏の見方にも冷水を浴びせる格好となった。

「200年に1度の惨事」ではない

 政府対応に対するマスコミ批判の高まりを気にしたトランプ大統領はメラニア夫人とともに同月11日、被災地を訪問、報道陣との会見で「こんな災害は過去誰も見たことがない。200年に1回くらいの惨事だ」とコメントするとともに、「しかし、災害担当官庁はスピーディに対応し、よくやった」として、関係当局擁護に回った。

 そして被災地訪問2日後の13日には、大統領は批判をかわすため、ノーム長官に対し、FEMA解体方針の撤回を指示した。

 大統領は、今回の南部テキサス大洪水について、「気候変動とは何の関係もなく、200年に1度の自然災害」とした点についても、その後、事実誤認が指摘されている。実は200年どころか、今世紀だけでも、米国ではそれ以上の被害をもたらした異常気象関連の災害が多発しているからだ。

 2005年には、ハリケーン「カトリーナ」がルイジアナ、ミシシッピ州を直撃、大洪水を引き起こし、1836人が死亡した。13年にも1年間で、南部諸州を中心にハリケーン、集中豪雨、竜巻など異常気象による18件の自然災害が発生、死者総数は474人に達した。また、16年から昨年にかけて同様の災害が米国内で122件発生しており、死者総数も5000人以上に達している。

 最近も6月の1週間だけで、ニューメキシコ、イリノイ、ノースカロライナ、テキサス各州で集中豪雨による洪水が発生し、合わせて130人以上が死亡した。

 このように異常気象に起因する災害が増えつつあることについて、「米国海洋大気庁」(NOAA)応用気象学者のアダム・スミス博士は米誌とのインタビューで次のように語っている:

 「近年、米国でも大気汚染などによる異常気象で災害が増えつつあることは確かだ。昨年の場合、米国の排気ガス量は21年比で1.3%増加した。地球温暖化が進むにつれて大気は確実に温められ、湿度上昇の結果として大量の雨を降らせるとともに、ハリケーンや台風を多発させる原因ともなっている。同時に、カリフォルニア州などで頻発する干天による大規模な山火事なども、温暖化と密接な関係がある」

政界入り前から続く地球温暖化への否定

 トランプ大統領は今回、テキサス大洪水の発生を受けて、FEMA解体の方針を撤回させたものの、環境保護団体などの間では「当座しのぎの措置に過ぎず、今後も気象災害関連省庁の縮小、改廃方針に変わりはない」とする見方が大勢を占めている。

 その最大の根拠として挙げられるのが、気候変動そのものに対するトランプ氏の徹底した軽視・蔑視姿勢だ。

 トランプ氏は政界に乗り出すかなり以前から、地球温暖化否定発言を繰り返してきた。

 すでに12年には、ビジネス雑誌とのインタビューで以下のように語っている:

 「リベラル・ジャーナリズムはしつこいくらいに『地球温暖化』について騒いでいるが、たまにブリザードが吹き荒れ、寒冷シーズンが到来することを無視している。温暖化など存在しない。『気候変動説』は中国の陰謀であり、米国製造業の国際競争力低下を狙ったものだ。われわれは豊富な石炭、石油を最大限活用し、工場をフル始動すべきだ」


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