2025年12月9日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年7月31日

 トランプとの付き合い方は、容易でない。6月24~25日にハーグで北大西洋条約機構(NATO)首脳会議が開催され、防衛支出国内総生産(GDP)5%目標が採択され、トランプから NATO条約第5条コミットメントを引き出すなど、成果を上げた。しかしこの裏には、事務総長ルッテの対トランプ対策(お世辞発言や国賓訪蘭設定等)があった。

 ルッテが準備の際、トランプに送った余りに気を遣ったメッセージも米国側から暴露された。NATOに向かうトランプにルッテは、イスラエルとイランの紛争を「抑制した手腕」や欧州の国防費増額を実現させた功績を称えて、「あなたは過去数十年のどの歴代米大統領も成し得なかったことを達成するだろう」、「欧州は当然のことながら多額の支出を行うことになる。それはあなたの勝利だ」等と記していた。NATO首脳会議成功のためのルッテの努力は評価されるが、過度のお世辞はトランプを助長するだけになるだろうことを危惧する。

関税、経済、相互依存の武器化

 トランプは、関税を軍事手段と同一視している。貿易・経済については、国際社会はもっと緻密な規範の社会であることを全く理解していない。国際秩序を無視する関税の武器化、経済の武器化、相互依存の武器化を図っている。

 ウクライナ戦争のために対露関税100%上乗せを脅かし、ブラジルには全く無関係なボルサリーノ支援のために50%の高関税を掛ける。トランプ関税には、価値観や原則が欠如している。

 縁故主義の傾向もある。トランプに近い個人や会社などの利益で動いているようにも見える。これがトランプの取引の実態であろうか。それは、決して成功しないし、米国を含め世界の人々の利益にもならないだろう。

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