2025年12月6日(土)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2025年7月28日

 また、軍事施設や国境管理施設などの撮影も厳しく制限されており、逮捕に至らなくても当局から一時拘束され、撮影した写真の削除を求められることが少なくない。スケッチも取り締まり対象になる可能性がある。

 さらに、「観光を名目に中国の自然保護区に複数回入り込み、大量の昆虫サンプルを採取し、国外に持ち出していた」という事例も挙げられており、昆虫採取までもがスパイ罪の対象となり得るという、日本人の常識では考えられないような範囲にまで「国家機密」が及んでいることがわかる。

 外国人の不安に対し、中国当局は「違法行為を犯さなければ安心だ」と説明するが、いったい何が違法行為なのかが曖昧なのだ。

100%の安全は困難

 一般の日本人にとって、スパイとして拘束される可能性が最も高いのは、偶然のケースだ。その可能性はきわめて低いとはいえ、中国の法制度が曖昧なままで柔軟な運用を可能にする仕組みである以上、100%の安全を得ることは困難である。意図しない形で「スパイ行為」と見なされるリスクは常に存在する。

 中国は今や世界第二の経済大国である。そうした立場になった以上、外国人にも理解、納得できるような明瞭な法制度、国家機密の定義を打ち出すべきだろう。そうした要請は以前から繰り返し伝えられているが、現時点では中国政府にはとりあう姿勢は見られない。

Facebookでフォロー Xでフォロー メルマガに登録
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。

新着記事

»もっと見る