このような工法が適用できれば、片切片盛の施工箇所が格段に増えて、全切の高い切土が減って、切土法面の崩壊の減少につながる。これを重量のあるトラックが走る林道に応用できるかは断言できないが、試験研究してみる価値は大いにあると考える。
一般土木の軛(くびき)から離れて、森林土木らしい生きた現場発生資材を利用することにより、防災性能の強化と工費の節減という一見相反する目的を同時に達成することができるのだ。今後の研究開発に期待したい。
地質・地層の見極め
写真15を見てもらおう。一見して明らかに滑り落ちそうな岩盤である。これを流れ盤あるいは流れ目などと呼んでいるが、このような箇所で切土をすると、常に切土法面が滑落の危険にさらされる。
流れ盤は地山の傾斜が地層の傾斜と同方向の箇所で、逆に地山の傾斜と地層の傾斜が交わるような箇所を受け盤と呼ぶ(図6)。
流れ盤において林道を開設すると、長い区間に渡って切土の崩落が予想され、また酷い箇所では滑落がどんどん上に進んで止まらなくなる(写真16)。こんな箇所では、林道開設を避けた方が無難である。
受け盤は、安定していて崩れる心配は少ないが、掘削の能率が悪くなって工費が掛かり増しとなる。安い工費で維持管理に費やすか、高い工費で維持管理費を節約するか、設計段階で選択に迫られる。
このような箇所でもできるだけ切土高を低く抑えることが肝要であり、地山の傾斜の緩いところを狙った線形とする。もちろん根株積みによって片切片盛とすることによって、切土を減らすことも有効な手段である。
以上のように、構造等に一工夫加えることによって林道が被災する確率を引き下げることが可能である。あらゆる職種の現場関係者に、被災の形態をよく観察して、新たな対策に挑む姿勢と柔軟な発想をもってもらいたい。

