生成AIの利用は進むのか
米国では、生成AIの利用を懸念する声が大きい。ピューリサーチセンターの昨年8月の調査では、今後20年間で米国でのAIの影響について尋ねた設問で、肯定的が17%に対し、否定的は35%だ。どちらでもない33%、分からない16%だった。
利益あるいは害をもたらすかとの質問には、利益24%、害43%、分からない33%だ。仕事の進め方にプラスと考える人の比率は23%しかない。
雇用への影響も懸念されている。今後20年間でAIにより雇用が増えると考える人は5%、減るが64%、変わらないが14%、分からない16%だ。
回答者は、将来AIに奪われる可能性のある仕事を表-1のように判断している。この市民の見立てと、AI専門家の判断は少し異なっている。キャッシャー、工場労働者などについては、専門家も同じ見方だが、トラック運転手については、専門家の62%が減少としており、AIが自動運転を促すとみている。
否定的な見方があるものの、生成AIの利用は広がっている。その利用にはデータセンターが不可欠だ。
大型化するデータセンター
最近日本でも、地方経済の起爆剤として注目されているのが生成AIに不可欠な施設データセンターだ。米国の世論調査では、「データセンターが必要」と支持する比率は93%だが、自分の街にできるとなると、たちまち支持は35%に落ち込む。
いわゆるニンビー(NIMBY-Not In My Backyard-家の裏庭にはお断り)施設だ。騒音、排熱などもあるが、大量の電気と水の消費が料金に影響すると考える人も多い。
データセンターは、「インターネット用のサーバーやデータ通信、固定・携帯・IP電話などの装置を設置・運用することに特化した建物の総称」(日本データセンター協会)だ。
読者の皆さまも毎日データセンターのお世話になっているはずだ。スマホあるいはパソコン使用時にインターネットを通し動画、音楽、書籍などを要求した際に、サーバーと呼ばれるデータなどを提供する装置からインターネット経由で送られてきている。検索した時にもサーバーに蓄積されている画像などのデータにアクセスし、適切なサイトを表示してくれる。このサーバーを管理し、置いておく設備がデータセンターだ。
グーグル、マイクロソフトなどGAFAMと呼ばれる世界の大手テック企業が全て米国を本拠としているように、世界のデータセンターの約半分は米国にある(表-2)。
国際エネルギー機関のデータでは、24年の世界のデータセンターにおける電力消費量は、4150億キロワット時(kWh)。世界の消費量シェアは米国45%、中国25%、欧州連合(EU)15%となっている。
中国のシェアが高いのは、中国に大規模データセンターが多くあるからだろう。データセンターのランク付けは何を基準にするかで変わるが、面積を基準とすると世界ランキングの上位は中国企業が占める(表-3)。
1位の中国、内モンゴルのチャイナテレコムの設備は、IBMのランキングも世界最大規模としている。電力供給の規模では15万kWだが、気候条件を考えると冷却用の電力量は小さくなっているだろう。



