2025年12月5日(金)

World Energy Watch

2025年9月29日

 今までのデータセンターの多くは小規模だった。500から2000台のサーバーを収容する1000から5000kWの消費電力の設備だ。しかし、生成AIの利用のための計算量は大きく増え、データセンターはハイパースケールと呼ばれる大規模化が進んでいる。

 ハイパースケールの定義はないが、IBMは少なくとも5000台のサーバーを収容し、10万kW以上の消費電力の設備としている。大型化が進む最近では20万kW以上を指すとの説も登場している。

データセンターを支えるもの

 生成AIの利用が広がり、データセンターへの投資も急激に増加している。国際エネルギー機関によると、2024年の投資額は全世界で5000億ドル(75兆円)に達しているとみられている。

 米国の大手テック企業グーグル、アマゾン、メタ(フェイスブック)、マイクロソフトの4社が今年1月から6月にAI関連、主としてデータセンターへ投資した額は1550億ドル(約23兆円)。この金額は、今年下期、来年と膨らみ4社は来年4000億ドル(60兆円)を投資すると報じられている。

 米国の株式市場を下支えしているのは、データセンター投資だ。ポール・クルーグマンは、国内総生産(GDP)の成長額と情報処理機器(データセンター)への投資額を単純に比較し、成長の半分以上を情報処理機器投資が占めていると看破している。

 彼の主張を図にしたのが図-1だ。単純化しすぎかもしれないが、米国のGDPの伸びを支えているのは、AI関連設備投資のようだ。

 民間の設備投資額の伸びもデータセンターへの投資額が支えているようだ(図-2)。情報処理機器への投資額は年率換算で6000億ドル(90兆円)を超えている。

 AIを支えるデータセンターを支えるのは、電力供給だ。データセンターに置かれているサーバーは使用に伴い発熱するので、データセンターの運営には、サーバー中にある中央処理装置(CPU)、画像処理装置(GPU)、さらに記憶装置を動かす電気と冷却用の電気なども必要だ。

 データセンターの用途と規模により電力使用の状況は異なるが、AI用では電力消費の60%が半導体、5%程度が記憶装置、20%が冷却用、残りがネットワーク設備などに使用されている。

 世界と米国の電力需要は、AIの活用が広がるにつれ大きく増加することが予想される。米国の成長と株式市場を支えるデータセンターは十分な電力供給を受けられるのだろうか。

電力供給が成長のカベになる

 テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が保有するAI開発企業「xAI」は、他の生成AI企業との比較では出遅れた。自社の生成AIのトレーニングのため、マスクはテネシー州メンフィスの工場跡地を買収しデータセンターを建設した。メンフィスは、エルビスプレスリーの生誕地として有名だが、凶悪犯罪の発生率が米国1位の街でもある。市は工場の誘致に努めているが、長続きしない工場もあるようだ。

 マスクは、データセンターへの電力供給のため地元の電力会社と5万kWの電力供給契約を締結したが、供給が大きく不足したので小型のガスタービンを35基、合計42万kWを設置した。地域住民から窒素酸化物が排出されていると抗議が巻き起こり、地元紙から全米のニュースにまで取り上げられる騒ぎになった。

 電力供給がなければ、AIは使えない。トランプ大統領は、AI用インフラ確保、原子力発電促進、石炭火力の閉鎖延期など電力供給確保に関し多くの大統領令を発令し、電力供給確保に乗り出している。

 効果はあり、今年閉鎖予定の石炭火力発電所の閉鎖延期が伝えられている。しかし、効果は限定的だ。


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