2025年12月5日(金)

World Energy Watch

2025年9月29日

 昨年末のエネルギー省(DOE)のレポートは、データセンター用電力需要は23年の1760億kWh、全電力需要に占めるシェア4.4%から、28年には3250億kWh~5800億kWh、シェア6.7%~12%に伸びると予想している。

 コンサルからも多くの予想が出ている。たとえば、S&Pグローバルは、24年のデータセンター用需要量2800億kWhは、28年までに5300万kWhにほぼ2倍になると予測している。

 電力産業のコンサルICFは30年の電力需要量は23年比25%増と予想している。日本の発電量に匹敵する1兆kWh増える計算だ。

 予想に幅があるのは、データセンター事業者が複数の電力会社に供給を依頼しているケースがあり需要が水増しされている可能性があること、設備の供給が追いついておらず建設に遅れが出る可能性があるためだ。地方では電気技師などの人材も不足している。もちろんAIへの投資が適正なリターンを生まなければ撤退する事業者も出てくるだろう。

安定的な電力供給は実現するのか

 米DOEは、電力供給・使用量(発電量と輸入量)と設備容量も予測している。標準ケースでは、25年の電力使用量4兆2200億kWhが28年に4兆3740億kWh、30年に4兆5000億kWhに伸びる。しかしデータセンターの需要予測には追い付いていない。

 図-3は23年からの電力使用量の増加予測とデータセンターの電力需要増予測を比較している。データセンター需要は、24年の1年間で1000億kWh以上増えており、28年時点で供給を超える可能性がある。データセンター以外の電力需要増も考えると、現状では供給力不足に陥る可能性はかなり高い。30年時点のICF予測には供給は全く追いつかない。

 予測は、24年末の法制度などに基づいているので、トランプ政権の政策は反映されていないが、大きな設備増が短時間で可能だろうか。

 今年の設備増設予測は6400万kWと史上最高の導入量になっているが、内訳は、太陽光3300万kW、蓄電池1800万kW、風力800万kW、天然ガス火力設備500万kWだ。一方、閉鎖予定約900万kWは、全て火力設備だ。データセンターは24時間、365日安定的な供給が必要である。再エネが増えていく中で安定供給に不安はないのだろうか。

 トランプ政権は、火力、原子力に力を入れ、再エネへの支援制度を停止するので、再エネ導入量が減少する一方、安定的な供給が可能な設備導入には再エネ設備より時間が必要だ。

 大手テック企業は、自社のデータセンター用に、閉鎖した原子力発電所の再開、小型モジュール炉建設により電源の手当てに乗り出しているが十分だろうか。電力供給がネックになり、データセンター建設が進まないことが顕在化すれば、株式市場は冷や水を浴びることになる。

 データセンター新設には多くの不確定要素があるが、米国の電力需要と供給の状況は要注意だ。

Facebookでフォロー Xでフォロー メルマガに登録
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。

新着記事

»もっと見る