戦後80年の夏。「令和の米騒動」から1年が経ち、日々の報道も過熱気味です。ただ、米価暴騰や対症療法としての備蓄米放出の話ばかりで、「日本の農業がなぜここまで衰退したのか」「その過程で日本人は何を失ってきたのか」という本質に向き合う報道は皆無に等しく、私には違和感がありました。
現代は「飽食の時代」だと言われます。しかし、食料自給率(カロリーベース)は40%にも満たず、輸入品に依存した〝見せかけ〟の飽食であることは明らかです。
食べ物は、私たちの胃袋を満たし、生きるために欠かせないものです。だからこそ、時として、人間の理性をも揺るがす〝恐ろしさ〟を秘めています。想定外の事態になれば、多くの日本人は我を忘れ、食料の奪い合いなるでしょう。私は、農業の専門家ではありませんが、戦争体験者として実感を持って言えることがあります。それは、人々の不安の根底にある日本の構造的な問題にこそ、目を向けるべきということです。
