玉木氏は何ができたか
では、玉木氏はどうしたら良かったのだろうか。安全保障、エネルギー、憲法のすべてで立民と対立することはなかったかもしれない。
憲法改正は安倍晋三元首相もできなかったのだから「憲法改正の議論を続ける」というだけで良かっただろう。原発も新設は難しいだろう。安全性の規制が厳しくなって、原発が安価な電源であるかも分からなくなっている。既存の原発は安全性を確保して動かした方が良いだろうが、動かなくても多少コストが上がるだけだ。するとどうしても合意が必要なのは安全保障になる。
日本が「右傾化」しているのは海外状況の反映で、日本が自発的に「右傾化」しているわけではない。日本が右傾化しているというのは、日本の左翼の大きな誤解だ。
ロシアがウクライナに侵攻し、中国が近隣諸国、台湾を威圧している。北朝鮮は核を保有し、ミサイルを何度も発射している。アメリカは北大西洋条約機構(NATO)のヨーロッパ防衛義務も果たさないかもしれない。それなら、なおさら日本はどうなるのかと心配になる。
外的環境の変化で、自国の防衛力を高めないといけないと皆が思っているだけだ。台湾の蔡英文前総統も支持率が低迷していたのに2016年から24年まで2期8年続いたのは中国が19~20年の香港の民主化デモを弾圧したからだ。あれがなければ台湾は国民党政権になっていただろう。
戦前の歴史を見れば、日本が中国で戦線を拡大しなければ、日米対立は決定的にならなかっただろう。日本が大人しくしていればアジアは平和だったというのはおそらく正しいだろうが、現在、日本が大人しくしていても中国とロシアと北朝鮮は大人しくなってくれない。
玉木氏は、安全保障政策で立民の政策転換を求めたが、これは立民にとってこそ必要なことだった。この政策転換ができなければ、立民は永遠に政権に付けないだろう。立民はそこが分かっていなかった。玉木氏もその一点だけで協議し、合意を得るという姿勢を見せることが必要だったのではないか。
要するに、負けたのは政策の一致で人々が結びつくことが分からなかったマスコミと安全保障政策の転換の必要が分からなかった立民ということになる。
