韓国政府が目指す戦時作戦統制権の返還
425事業の核心は、電子光学/赤外線(EO/IR)衛星1基と合成開口レーダー(SAR)衛星4基による群集運用にある。SAR衛星は夜間や悪天候でも高解像度映像を取得でき、偽装幕や茂みに隠された金属装備も探知できる。この能力は北朝鮮のミサイル発射兆候を捉える「キルチェーン」構想の要となる。
だが、技術的課題は残る。衛星の解像度や運用ノウハウは一朝一夕に獲得できるものではない。北朝鮮でさえ光学衛星を打ち上げた現在、衛星を持つこと自体が優位性を意味しない。
重要なのは、取得した膨大な画像データを迅速に分析し、作戦に活用する総合的なインテリジェンス能力である。この点で韓国がどこまで成熟しているかは不透明だ。
日本にとっての懸念は二つある。第一に、韓国の宇宙監視能力向上が必ずしも北朝鮮のみを対象としていない可能性だ。日本海上空を周回する韓国の偵察衛星は、竹島周辺や日本の防衛施設も監視範囲に収める。第二に、韓国の軍事技術の急速な発展が、東アジアの軍拡競争を加速させる要因となることだ。
日本も情報収集衛星を運用しているが、韓国の「425事業」完成は、宇宙空間における監視競争が新たな段階に入ったことを示している。日本は自国の衛星能力強化と同時に、同盟国との情報共有体制を再構築し、変化する安全保障環境に対応する必要がある。韓国の動向を注視しつつ、独自の宇宙戦略を練り直すべき時期に来ている。
