2025年12月31日(水)

田部康喜のTV読本

2025年12月31日

子役から娘役、女優に脱皮した北川景子

 美貌の女優の代表格のひとりである北川景子も26年に不惑となる。『美少女戦士セーラームーン』(03~04年)で実質的にデビューした彼女も、その後は幾度もオーディションに落ちた経験の持ち主である。

 この連載『TV読本』で触れたことである。「子役から娘役そして大人の女役に成長するには、それぞれ壁がある」。自らはそれに成功した女優の高峰秀子の言葉である。

 子役から娘役、大人の女優に脱皮した北川は、日本を代表する女優となった。さらに、脱皮したことを魅せた。連続テレビ小説『ばけばけ』のなかで、主人公のとき(髙石あかり)の実母にして良家の奥様から夫の死によって転落、道端で物乞いをするまでに零落した雨清水タエ(うしみず・たえ)役の名演は観る者を驚かせている。

 『あなたを奪ったその日から』(25年4月~6月、関西テレビ制作)において、デリカテッセンの店で買ったピザが原因の甲殻類アレルギーで、娘を喪失。経営者の娘を誘拐して、実の娘と育てるという愛憎劇の母親役もまた、北川の女優としての転機のひとつとなった。

 映画『ナイトフラワー』(内田英治監督)は北川景子主演で25年末に公開され、報知新聞映画賞の主演女優賞を受賞した。夫が借金のために家を出ていき、母子家庭で2人の子を育てている。まさに髪を振り乱して、ラブホテルの清掃などバイトを掛け持ちしながら暮らす。合成麻薬の売人がヤクザに殴り倒されて昏倒している間に、ポケットから麻薬をくすねる。盛り場で売りさばこうとしているとき、なわばりにしている売人から暴力を振るわれる。

北川景子(右)は映画『ナイトフラワー』で、報知新聞賞の主演女優賞を得た(同映画公式Xより)

 たまたま、森田望智が演じる拳闘家に助けられる。彼女は風俗で夜は働いている。北川と森田はふたりで組んで合成麻薬の売人となる。母親に捨てられた過去を持つふたりは、北川の子どもとともに「家族」となる。

 女優の歴史を顧みるとき、「大人の女性」役の先に老いを隠さない終生の女優の道がある。日本の代表格は田中絹代だろう。戦前からのスターだった彼女は、生涯を女優人生にかけ、老いを隠そうとしなかった。

 『サンダカン八番娼館 望郷』(熊井啓監督、1974年)においては、かつて娼婦としてボルネオに売られた女性が老婆となって惨めな環境のなかで生きている。演技によって、ベルリン国際映画祭銀獅子賞(女優賞)を受賞した。


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