2025年12月31日(水)

田部康喜のTV読本

2025年12月31日

 北川の今後の活躍は予想もつかないが、不惑を前にした女優としての覚悟は田中絹代に通じるものを感じる。

美貌の女優が大輪の花を咲かせた

 「不惑」を超えた女優の活躍にスポットライトが当たった25年でもあった。ここでは、中村ゆりと松本若菜をあげたい。ルッキズムではない。女優の世界のことである。美貌の女優が大輪の花を咲かせ、26年にも軌跡が続いていこうとしている。

 『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』(25年10月~12月)は、遺品整理業のチーフを務める草彅剛を主人公にすえる異色のドラマだった。中村ゆりは、草彅の会社をはじめとする過労死による大量の自死を隠蔽してきた企業グループの専務の妻にして、絵本作家役だった。

 中村は母の生前の遺品整理に草彅がかかわったことから、互いに心惹かれる関係に。企業グループに対する遺族の集団訴訟と草彅と中村の“不倫疑惑”報道…。夫が大量の社員の自死について告発の会見を開いて、企業としての責任を明らかにした。

 ラストシーンが美しい。中村は結婚指輪をはずして草彅とよく逢っていた公園のベンチにすわっている。手には、筆者に本名を書いた絵本が。

坂口健太郎(右)の妻役として、難しい役を演じきった中村ゆり(Netflix映画 『さよならのつづき』独占配信中)

 Netflix配信の『さよならのつづき』(24年)もまた、中村の演技が忘れがたい作品である。有村架純と坂口健太郎のW主演。有村の恋人の心臓を移植された坂口と、彼女の思いの交錯を描いた。中村は坂口の妻役として、坂口が亡くなったあとに有村と心を通わせる。ラストシーンのふたりが笑顔になる。

 時代劇における中村ゆりのたたずまいの美しさもまた、特筆に値する。日本映画専門チャンネルが松本幸四郎を火付け盗賊改め方の長官役に配した、『鬼平犯科帳』シリーズ(24年1月から)。『鬼平犯科帳 血闘』(山下智彦監督、24年)は映画として上映された。

 中村の役どころは、密偵・おまさである。中村吉右衛門主演の『鬼平犯科帳』では、梶芽衣子が演じた。タランティーノ監督が『キル・ビル』(03年)において、梶芽衣子のファンであることからエンドロールに梶の楽曲『恨み節』が流れた。

 おまさ役として、中村は妖艶さにおいて梶に負けていない。今後も現代劇のみならず時代劇でも活躍が期待される。

 松本若菜がテレビのバラエティ番組に登場していたのを、たまたま観た。美貌の女優はついに“全国区”に昇格したのだろう。

 『ザ・ロイヤルファミリー』(25年10月~12月、TBS)において、主人公の妻夫木聡のかつての恋人にして、北海道の実家の牧場を引き継いだ役は見事な演技力を魅せた。このドラマの主人公は馬たちの血統にあった。

 有馬記念で勝利するまでの展開の中で、彼女の父とともに育ててきた競走馬がゴールする。Netflixでも地上波とともに配信された。松本の美貌の女優としての存在が世界に届いたことは喜ばしい。

 NHKが26年春に放送する『対決』の主役にも抜擢されている。


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