2025年12月31日(水)

田部康喜のTV読本

2025年12月31日

勢いは止まらなかった河合優実

 若手女優陣はどうか。

 映像界において、河合優実による河合優実の世界が席巻する時代が続いた25年であったのは間違いない。

 『旅の日々』(三宅唱監督、25年)は、映画の新しい潮流を切り拓いた作品に与えられる、ロカルノ国際映画祭において「金豹(きんひょう)賞(グランプリ)」を獲得した。この作品は独特の作風で知られる、漫画家のつげ義春の『海辺の叙景』と『ほんやら洞のべんさん』が原作。

2025年も〝主役〟として駆け抜けた河合優実(『旅の日々』公式HPより)

 河合優実は、映画中の映画ともいえる藝術大学で上映された『海辺の叙景』の登場人物として、どしゃぶりの雨のなかで、ワンピースを脱いでセパレートの水着が現れる。そして泳ぎ始める。

 オペラ歌手は“楽器”とおなじように身体全体から音楽を奏でる。河合の美しい水着姿からは、女優も全身をつかう美しいミューズであることがはっきりとわかる。

 『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(岸田奈美原作、NHK、23年)において、ダウン症の弟と車椅子の母親と明るく生きている、原作者の岸田を演じた。この演技を観た宮藤官九郎が『不適切にもほどがある!』(24年、TBS)の高校生役に起用。その後は、映画『あんのこと』(同、入江悠監督)『ナミビアの砂漠』(同、山中瑤子監督)……。

 舞台の活躍もまた素晴らしかった。『私を探さないで』(岩松了作・演出)を25年秋に下北沢・本多劇場で観た。謎の失踪を遂げた女子高校生を過去と幻想シーンで登場して、教師役の小泉今日子に演技で負けていなかった。

清原果邪と蒔田彩珠の〝底力〟

 若手の成長株として、河合優実よりも先行して映像界を走ってきたふたりの軌跡も観ていこう。

 清原果邪は、Netflix配信『イクサガミ』(25年)において、孤児だった兄弟とともに父親となった剣豪に鍛えられた女剣士役である。作品は、明治維新の直後を舞台にして、京都から東京までの道程を元武士同士が闘いながら勝ち抜くゲーム。道の途中途中で勝ち抜く武士を賭ける富豪たちと、それを拿捕しようとする維新の新政府。

 アクション女優としての才能がある清原は主役の岡田准一とともに旅を続ける。season2の制作も決まったヒット作である。

アクション女優として、舞台女優としての才能を開花させ続ける清原果邪(『片思い世界』公式Xより)

 映画『片思い世界』(土井裕泰監督、25年)は、広瀬すずと杉咲花とともに秘密を抱えて暮らす末っ子役だった。若手を代表するふたりとの共演と思いがけないラストシーンに涙がこぼれた。

 24年度の日本アカデミー賞の優秀助演女優賞を受賞した『碁盤斬り』(白石和彌監督)における、盗みの疑いをかけられた碁打ち好きの父親役・草彅剛のために、苦界に身を沈めようとする娘役は心に残る。


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