「新たな仕事が立ち上がると、サンプルをつくり原材料や塗装工程を決め、あとは外部の職人さんに仕事を割り振ってつくってもらいます。職人さんは全国にいますから業界全体が〝一つの工場〟として回っていけばいいと考えています」
文化度が高い職人が集まる
京都だからつくれるもの
職人の育成も漆屋の仕事と捉える佐藤さんだが、課題は少なくない。
「伊勢神宮の調度品が作れるような頂点を極める職人を育てないと漆文化の伝統が継承されなくなってしまいます。高みを目指す職人さんが食べていけるよう、仕事を作り支えていきたいのです」
容易なことではないが、佐藤さんは前を向く。今では海外ブランドからの依頼も少なくないという。
「海外から京都を目指し、大企業も含め個人のデザイナーやアーティストさんなど様々な方が、うちに来てくださいます。多いのは万年筆やバッグなど。高額で少量生産の上顧客向け商品も多いです。『漆を使って何か提案してほしい』などと頼まれれば西陣織や金工屋さんなど様々な工房と組んで試作品を作ります。日本文化が多く残る京都は、多様な人や物との交流を通して幅広い技術や知識が醸成されていく場所です。『品の良いもの』は文化度の高い京都だからこそ生み出すことができると思います」
やはり京都という土地に大きな力があるのだろうか。
「もちろんです。日本でつくられる最上の品は神様に捧げるか宮中に献上する。文化は宮中に集まりそれが外へ波及していくのです」と言い、さらに、佐藤さんはこう続けた。
「古くから多くの漆器産地も各地の武将が武具や調度品を作る際、職人を都から呼び寄せたり、逆に職人を送り込んで学ばせ、発展してきました。流行も技術も文化の多くが京都から発信されてきました。それは今でも同じだと思います。その中でも漆こそが日本を代表する文化だと僕は思うので、これからも育んでいきたいですね」
