マルマラ海に浮かぶ無数の石油タンカー、トルコはロシア産原油の輸入国
2024年のロシア産原油の輸出先は中国47%、インド38%、トルコ6%という統計数字がある。他方2024年の原油輸出額(ドルベース)ではサウジアラビア、UAE、米国、カナダについでロシアが5位となっている。ロシア原油は他国の原油より25%程度ディスカウントして取引されているようなので、原油輸出の数量比較ではロシアは世界3位であろうと推測する。
黒海沿岸のノボルシースク港でタンカーに船積みされたロシア原油は、ボスポラス海峡を通りトルコの内海のマルマラ海を経てダーダネルス海峡から地中海に出る。7月の中旬にマルマラ海沿いに走っているときに、筆者は数えきれないほどの石油タンカーが係留されている光景を見た。トルコの製油所に向かうタンカーであれば、事前に調整した到着予定日に合わせてタンカーを運航するので係留することはない。
通常の原油の国際輸送ではタンカーの滞船による追加費用の発生を極力抑えるためにタンカーを係留することはない。業界情報ではロシアは自国のタンカーに加え多数の外国籍老朽タンカーを安値でチャーターして、中国やインドなど“友好国”に原油を輸送しているという。マルマラ海に係留された多数のタンカーはロシアが自国産の石油の買い手探しに四苦八苦していることが原因であろうと推測する。
友好国との貿易がロシア経済を支えている
ジェトロによると2023年~2024年上半期のロシアの対外貿易の50%以上が中国・インド・トルコ・ベラルーシという“ロシアの友好国”であるという。
トルコからロシアへの輸出品目は機械類、電気機器、化学品、ゴム製品など工業製品である。トルコ産業界にとってはウクライナ戦争による“戦争特需”であろう。トルコは黒海を挟んでロシアと隣国という地の利を生かしてしたたかに経済的利益を得ているのだ。
トルコのビーチリゾートのロシア人観光客とロシア人居住者
9月7日。トルコ最大の人気ビーチリゾートであるアンタルヤの西方のケマル・ビーチのマリンスポーツショップでシャワーを借りた。このショップは観光船、パラセール、バナナボート、水上バイクなどなど豊富な機材を保有しており近隣の豪華ホテルとも提携して相当繁盛していた。
パラセールを牽引するモーターボートを操縦している青年と雑談していたら、オーナーはロシア人とのことだった。アンタルヤ近辺のビーチにはロシア人観光客が非常に多いので青年もロシア語を勉強しているとのこと。
確かにビーチ沿いのカフェやレストランには英語・ロシア語併記の看板が立てられている。
9月8日。アンタルヤの幹線道路沿いの観光客向けのショッピングモール。入口にロシア語の案内板、外壁にはロシア語でメッセージが書かれていた。
不思議に思って隣のガソリンスタンドのオーナーに聞くと「ロシア人の観光客が多いのでロシア語で表記している。ショッピングモールのオーナーもロシア人だよ」と教えてくれた。さらに「ロシア人の金持ちが土産物を沢山買って持ち帰るのか」と筆者が聞くと、「このショッピングモールは観光バスやミニバスが立ち寄る場所なので残念ながらフツウのロシア人ばかりだ」との回答。
トルコの貿易統計によると、ロシア資本で設立された企業の数は22年には140社、23年には68社である。
トルコでは1万円札の両替は不可でもロシアのルーブル紙幣は両替可能
9月17日。アンタルヤの西方のアランヤも人気ビーチリゾートだ。やはり町の中にはロシア語の看板・案内が目立つ。手持ちの米ドルをトルコリラに交換しようと両替屋の交換レートをチェックした。交換レートの電光掲示板の一番下に“RUB=0.4350”とあった。
なんとロシアのルーブル紙幣をトルコリラに交換しているのだ。換算すると1ルーブル=1.65日本円である。まともな交換レートである。比較のためにアランヤの他の両替屋も数軒チェックしたがルーブルの交換レートは似たようなものだった。ちなみにトルコでは日本円は実質的にどこでも両替不可能であった。
トルコのロシア人居住者は2024年5月時点で9万6000人
2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻開始した。2022年9月にプーチン大統領が徴兵制の拡大を発表すると一気に海外へ脱出するロシア人が急増した。デンマークのNPOによると、ロシアによるウクライナ侵攻以来2023年までに約80万人のロシア人が海外に移住したという。
ロシアとウクライナ双方と友好関係にあるトルコは、侵攻後もロシア人のビザなし渡航を認め、西側の対ロ制裁にも加わらなかった。そのため祖国を脱出したロシア人の受け皿をなった。
トルコ政府の数字によると2022年末で居住許可を得たロシア人は15万4000人。主にイスタンブールと人気リゾートのアンタルヤ周辺に居住。
ロシアに経済制裁を課している欧州諸国には渡航できないためロシアと友好的で気候が温暖で物価が安いトルコ、インドネシア(バリ島)、スリランカなどへロシア人が殺到したのだ。
その後トルコ政府が居住許可制度を変更したことやトルコのインフレ・物価高を背景に物価が安定して言語が似ているジョージア、セルビア、モンテネグロなどにロシア人がトルコから移住。それでもトルコの統計では2024年5月時点で10万人近いロシア人がトルコに住んでいる。やはり祖国を離れたロシア人には友好国トルコでの生活は居心地が良いのだろう。
以上 次回に続く
