Brexitは他国の離脱を促すことになるかも知れないという初期の恐怖は大方消失した。EUは単一市場のインテグリティを守ることを依然欲しているが、非加盟国による少々の「つまみ食い」に従来と比べてオープンである。
スイスとの関係のような部分的なメンバーシップの新たな形態は、EUが東方に向けてさらなる拡大を検討するにつれ、より受け入れ可能に思えるかもしれない。国境を越えた人の移動の自由を維持することすら、幾つかのEU加盟国が国境コントロールを静かに再び導入するに至っている。
その先には、非常に異なる形態の関係の可能性がある。ノルウェーやアイスランドのような非加盟国がEU加盟の可能性について長く休眠状態にあった論議を再開しつつある。西バルカン諸国、モルドバ、ウクライナがEUとのより密接なつながりを欲しているが、このつながりは長期にわたり完全なメンバーシップには満たないものかもしれない。ハードなBrexitよりも英国にとって都合の良い異なる形状の関係が浮上することもあり得よう。
振り返れば、16年の国民投票は欧州プロジェクトにおける英国の位置を恒久的に決着させた訳ではないとみられることになるかも知れない。英国とEUの関係は、時間を経て変化を続けるであろう。そして、次の2、3年は双方を相互に遠ざけるのではなく近づけるように働く可能性が高い。
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覆水盆に返らず
EUからの離脱の是非を国民の判断に委ねた16年の国民投票は無謀だった。今や国民の半数以上がBrexitは間違いだったと考えていることは事実である。だからと言って、Brexitを逆戻りさせ元の鞘に収まることがほぼ不可能な理由はこの記事が指摘する通りである。
ロシアのウクライナ侵略やトランプ政権の奇矯な政策運営といった地政学上の情勢の故に、英国とEUの緊密な協力関係を構造的に確かなものとする切迫した必要性はあるが、覆水盆に返らずということである。
いずれにせよ、スターマー政権にBrexitの逆転という国論を分断する問題を持ち出す体力があるとは考えられない。スターマーは分野毎に実際的な方法でEUとの協調体制を固めることを模索している。しかし、必ずしも巧くは行っていない。
欧州の防衛と防衛産業の強化のためのEUのSAFE(EUが総額1500億ユーロの融資をもって加盟国の兵器調達を支援する枠組み)に英国が参画する試みもその一つである。去る5月の英国とEUの首脳会議で双方の間の「安全保障・防衛パートナーシップ」に合意した際、欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は、このパートナーシップはSAFEの枠組みでの「共同の調達」に英国の参加の道を開くと述べたが、その後の交渉は11月には頓挫した。その要因の一つは英国の防衛産業の参加が及ぼすフランスの防衛産業へのインパクトというフランスのいつもながらの執着にあったらしい。
