ドラマのヒロインは、さまざまな理由で心身が傷ついた子どもたちを受け入れる、児童ケアセンターの職員である児童心理司の氷崎游子(松雪泰子)である。
氷崎が帰宅するたびに、手をしつこいほどに洗うシーンが何度も挿入される。事件の現場に姿を現す、そして、現場に仮設された献花台に花を供える。
一家がすべてなくなった事件の家族になにがあったのかは、これから明らかにされるのだろう。
ドラマは、馬見原や氷崎をはじめ、登場人物たちがそれぞれ家族の問題を抱えていることが描かれていく。そして、事件に手繰り寄せられるようにして、それぞれが絡み合い、ドラマは織りなされていく。
家族とはなにかを問う
「家族狩り」は、家族とはなにかを問うドラマである。このテーマが重層的に進行する原作をドラマの脚本は忠実に生かしていると思う。登場人物の肩書や役割に、原作とはいささか違いはあるとしても。
氷崎は、アルツハイマー症の父親を抱えている。母がその介護に疲れている。氷崎は仕事で保護したこどもたちを最大限の努力によって、幸せに導こうとしているが、理想はかなわない。
氷崎はかつて、馬見原の非行に走った娘を保護したことがある。娘への愛情が感じられない彼のほほを平手打ちした過去がある。
馬見原は息子を失い、そのために妻は精神疾患になり入院している。娘は家を出て結婚した。妻の入院中に、かかわりあった暴力団の妻と関係ができて、その息子に「お父さん」と呼ばれている。
氷崎と馬見原とからみあうのが、私立高校の美術教師の巣藤浚介(伊藤淳史)である。
巣藤は世田谷の事件が発覚する前日の夜、隣家の悲鳴を聞きながら、同棲状態の恋人に「猫よ。なにかあったら誰かが警察に知らせるでしょ」といわれて、通報しなかった負い目があった。
マンションから現場をのぞき込む巣藤に馬見原は気づいて、聞き込みで問い詰める。