しかし、シェインバウム自身の左翼政党モレーナの主要人物に対する告発により、この問題への対応は緊急性を増している。アダン・アウグスト・ロペスは、かつての側近とCJNGとの間の疑惑に対する抗議を受け、上院におけるモレーナの党首を辞任した。しかし、前政権で内務大臣を務めたロペスは、依然として与党の上院議員である。
トランプ政権は、麻薬カルテルの政治的盟友に対する取り締まり強化の一環として、少なくとも1人の州知事を含む50人以上のメキシコの政治家や政府高官のビザを取り消したが、シェインバウムは、この問題について情報を持っていないと述べている。トランプはメキシコ大統領を「良い女性」と評しながらも、メキシコを動かしているのは彼女ではなくカルテルだと述べている。シェインバウムは、自身の党内の腐ったリンゴに取り組むことで、トランプの誤りを証明できるだろう。
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治安はまだ解決していない
今日のメキシコの2大麻薬カルテルの1つハリスコ新世代カルテル(CJNG)の実権を10年以上に亘り握っていた大ボスのエル・メンチョを排除したことは政府側にとっては、大きな成果であった。他方、これに対するCJNGの報復で20の州で250件の道路封鎖や車両放火が行われ国家警備隊員等25人が殺害されたことも大きな衝撃であったであろう。
政府側は、1日でCJNGを制圧し治安は回復したとするが、本来、このような報復活動を許したこと自体が問題であり、軍・警察当局は直ちに全国レベルの厳戒態勢に入るべきであった。また、CJNG側も、その能力を知らしめることができた以上、組織防衛の観点から敢えてそれ以上の行動を控えたに過ぎないのであろう。従って、この社説が、シェインバウム政権は、政治面での麻薬組織との訣別を徹底する等、これからが対麻薬戦争の正念場だと論じていることは極めて妥当だ。
麻薬カルテル問題の専門家等からは、このような組織のトップを殺害する手法では問題は解決しないとの批判めいた主張も行われる。
カルデロン政権時代には軍を大量に動員して正面から組織壊滅を図ったが、首領を失ったカルテルは多数の小組織に分裂してかえって治安が悪化したという苦い経験がある。だからといって、組織指導者を見逃す理由とはならず、また、ロペス・オブラドールのように社会的貧困等の根本問題に取り組むとして「銃弾より抱擁を」といった甘い対応が、治安部隊とカルテルとの衝突事件を減らすことにはなっても、麻薬組織犯罪を減らすことはなく、返って今日の麻薬組織の影響力の拡大をもたらしたことを反省するべきだ。
