2026年3月20日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年3月20日

求められる3つの対応

 必要なことは、治安上の戦略のみならずこの問題の構造的、経済的、政治的な側面を含めて総合的に、かつ一貫した継続的な対応を断固として進めることである。

 構造面では、麻薬組織を生む必要条件である麻薬に対する米国市場の旺盛な需要をトランプ政権が抑える努力がまず必要だ。トランプ政権は、米国内のフェンタニル濫用防止やオピオイド危機対策に関する国内プロジェクト・プログラムの予算を大幅に削減したが、これは愚行である。

 メキシコ国内では麻薬に代わる収入源や若者の雇用機会がないといった地域経済構造を改革する試みを並行して進めると共に、州や市の警官の待遇改善、内部告発者の保護、通信傍受等の諜報機能の強化、汚職対策等地方の警察や検察の能力強化が必要だ。

 経済面では、州政府、連邦政府レベルではカルテルを資金面で締め上げるための不審な取引の監視やペーパーカンパニーの摘発等、経済犯罪の防止に重点を置く必要がある。そして米国を始めとする国境検査の強化、情報共有、武器の流通の取り締まり等の面での国際協力がますます重要となる。

 これまで、メキシコは、麻薬問題にもかかわらず、労働コストやニアショアリングなどの追い風で旺盛な外国投資を背景に発展を続けてきた。この間、カルテルの組織犯罪は、単なる麻薬の製造・密売からあらゆる流通レベルでの恐喝、貨物や燃料の窃盗、人身売買に至る伝統的犯罪形態から不動産業や金融取引等を利用し、また、国境を跨ぐ経済犯罪に活動を拡大しているという。このような経済と麻薬組織の拡大が共存するような社会的体質の転換を図らなければ、麻薬カルテル問題は今後の経済発展の重大な足かせとなっていくであろう。

 そのためには、シェインバウムは、米国の協力を得て、また、米国の圧力をむしろ利用して麻薬カルテル対策を強化し、特に政治面では自らの党内を引き締め、政治と麻薬組織の癒着や腐れ縁を断ち切る決断を明確にすることが必要だ。

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