ホルムズ危機の影響
ホルムズ危機により化石燃料価格は上昇している。米国の原油価格指標WTIは、トランプ大統領の48時間以内のホルムズ海峡開放要求の期限、23日を前に、1バレル100ドルまで上昇した。戦争前から50%上昇したことになる。
トランプ大統領の支持率は、イランとの戦争が始まった後も各種世論調査では大きな変化はなく約40%だった。しかし、ガソリン消費量が多い米国の消費者が気にかけるガソリン価格の上昇は止まらない(トランプを追い込むガソリンと肥料価格の上昇、長期化するイラン攻撃とホルムズ危機の影響…日本にも求められる抜本的解決 Wedge ONLINE(ウェッジ・オンライン))。
3月22日の全米平均レギュラーガソリン価格は、1ガロン(3.8リットル)当たり3.942ドル。ひと月前より34%、1ドル強上昇した。
国際原油価格が下がらなければ、ガソリン価格も下がらない。ホルムズ海峡をタンカーが通過できなければ、原油価格は高止まりしたままになる。トランプ大統領は同盟国に船舶の警護を依頼したが、色よい返事は得られなかった。
48時間以内にホルムズ海峡を開放しなければ発電所を破壊するとの3月21日のトランプ大統領のイランに対する通告は、焦りを表している。
イランは開放に応じないだろう。電力インフラの攻撃に対しては、周辺国の淡水化プラント、エネルギーインフラを攻撃しその上でホルムズ海峡を完全に閉鎖すると表明した。中間選挙を控えたトランプ大統領が米国のガソリン価格の上昇に耐えきれないことが徐々に明らかになっている状況下、イランは石油を人質に周辺国にも攻撃を続け、有利な終戦の条件を引き出そうとするのではないか。
結局、23日の期限直前に、トランプ大統領は「イランとの協議は非常にうまくいっているので、発電所への攻撃を5日間延期した」とインタビューに応えたが、英BBCは、イラン外務省は両国間でいかなる協議もないと否定していると報じている。
実態は不明だが、やはりTACO(Trump Always Chickens Out‐トランプ大統領は強硬な姿勢を示した後に撤回することが多いので、「トランプはいつも怖気づく」の略)なのだろうか。交渉が停戦、終戦に結びつけば良いのだがまだ見通せない。
産油国も原油と石油製品が売れなければ、大半の歳入を失うことになり、国が行き詰まる。ホルムズ海峡を封鎖しているイランも事情は同じだ。身近なところでは、海峡を貨物船が通過できなければ、食品も日用品も手に入らない。
イランは自国産の原油の輸出を続けている。ホルムズ海峡近くのクー・モバラク・ターミナルからの原油の中国向け出荷を増やしていると報道されている。米国は原油価格上昇につながるカーグ島の積み出し設備への攻撃をしないと考えられるが、万が一に備えたリスク分散だろう。
中東最大の産油国サウジアラビアは、アラビア半島を横切るパイプラインを利用し紅海に面するヤンブーからの原油の出荷量を増やしている。3月14日現在、15隻のタンカーが停泊し、20隻が沖合で待機、57隻がヤンブーに向かっている。
今までの原油出荷量日量70万バレルが500万バレルまで増えている。日本向けも含まれている。
アラブ首長国連邦(UAE)もホルムズ海峡の南に位置するフジャイラからの出荷を日量100万バレルから225万バレルに増やしたが、イランの攻撃を受けた後出荷は落ち込んでいる。戦争前にホルムズ海峡を通過していた日量1500万バレルの原油の内、約3分の1はホルムズ経由ではない代替ルートで出荷されている。
しかし、ホルムズ海峡の封鎖が長期化すれば、仮に備蓄があっても影響を避けることはできない。どの国が大きく影響を受けるだろう。
国・地域により異なる備蓄の効果
国際エネルギー機関の加盟国が、3月11日に合意した備蓄の放出量は世界の石油消費量の約4日分に相当する合計4億2600万バレルだった。放出量は米国の1億7220万が最大で、日本7980万、カナダ2360万、韓国2250万、ドイツ1950万と続き、最少はルクセンブルクの10万だ。
日本の備蓄量4億7000万バレルの内17%が放出されるが、ホルムズ危機が長引いた場合に日本はどこまで耐えられるのだろうか。
