3月20日に、ギリシャの貨物船がイランへの食料とAISに表示し作動させた状態で海峡を西向きに通過した。AISを作動させ西向きに通過した3月2日以来の外国船になったと報じられた。
イランは、ホルムズ海峡に通常の航路とは異なる安全回廊を設定し、イラン当局の目視による検査のためイランのララク島の近くを航行させている(図-4)。
ただし、イラン政府の許可があっても、革命防衛隊が船舶を停止させたり押収したりするリスクも指摘されている。「安全」ではないかもしれない。
この安全回廊を、先述のインドのLPGタンカーを含め少なくとも9隻が通過しているが、その中に200万ドルを支払ったタンカーが含まれているとされる。
中国、インド、パキスタン、マレーシアなどが安全な通過をイラン政府と交渉していると報じられているが、日本政府は交渉を否定しており、「安全回廊」を利用する可能性は薄い。仮に「安全」な航路が設定されても、戦争前には両方向で1日120隻から130隻が通過しており、通過可能な船数は大幅に減る。
停戦、あるいは終戦によりホルムズ海峡が開放されるまで、日本船が通行する可能性はほとんどないのではないか。通過可能になっても輸入量は直ぐに元に戻ることはなく、価格の高止まりも懸念される。
インフレの時代は続く
ホルムズ危機は原油の価格を約50%、欧州市場の天然ガス価格を2倍近くまで引き上げたが、石油、LNGだけではなく、多くの商品の価格も上昇した。
発電で天然ガスの代替として利用される豪州炭の価格は、開戦前のトン当たり120ドル弱から先週末には146ドルまで20%以上上昇した。
中東諸国が、輸出市場の約半分のシェアを持つ天然ガスからアンモニア経由で製造される尿素と化学原料ナフサの価格も戦争開始後約50%上昇した。
ホルムズ危機が解消しても、カタールのLNG製造プラントなどがイランの攻撃で損傷しており、供給と輸送がすぐに回復することはなく、化石燃料と関連する製品の価格は高止まりしたままの状態になる可能性が高い。
危機が長引けば、価格はさらに上昇し、食品をはじめ多くの商品の価格に影響を与える。インフレの時代は長引くことになり、金利、為替にも影響を与える。不透明な時代になりそうだ。
国際エネルギー機関の事務局長は「史上最大の世界のエネルギー安全保障の脅威」と発言した。今回の危機では石油は第一次オイルショック時よりも供給が落ち込み、天然ガスの減少もロシアの引き起こしたエネルギー危機を上回る。
消費者は、家計の自衛のためにも安定供給に貢献するためにも、エネルギーと関連製品の節約に努めることになりそうだ。政府はガソリン価格引き下げに補助金を支出しているが、ガソリン価格引き下げは消費減に結び付かないことにやがて配慮する必要がある。
