例えば、「バールトマーラ計画(Bharatmala Pariyojana)」は、国全体の道路網整備を目的とするプロジェクトで、約3万4800キロメートルの国道・高速道路の建設・拡張に約10兆ルピー(約18兆円)の総予算(増額見直し後)が組まれています。インドの経済成長を支えるための最大規模の道路インフラ計画であり、物流効率向上、地方開発、都市渋滞の解消、国境インフラ強化を目的としています。
具体的にはデリー・ムンバイ高速道路やチェンナイ・バンガロール高速道路などがあります。フェーズ1は2017年から2022年、フェーズ2は2023年から2030年にかけての予定でしたが、2023年度時点でフェーズ1がまだ6~7割程度の完成度ということで、コロナ禍で1年くらい後ろ倒しになるのは仕方なかろうという情状酌量の余地はあれども、やっぱりスピード感がインドだなぁと思うところです。
僕の知人のインド内某サービス業小売のオーナーは、内装工事が完成約束予定から5カ月も遅れ、家賃だけ発生してコストはかかるわ施工業者に言い訳ばかりされるわで泣いておりました。ハコを抑えてお金を払い続けているものの一向に開店できない、といった原因不明の遅延はインドビジネスの常なるリスクです。
インフラ開発に関して、縦割り行政に横串を通し、中央と地方もつなげ、リアルとサイバーの統合一元化を目指したのが「首相ガティシャクティ(PM Gati Shakti)」政策です。2023年12月時点で総事業費は約30.7兆ルピーと推定されています。「首相ガティシャクティ」は統合パッケージの総称ですので、ここに紐づけられた多様な各種プロジェクトが存在する構造です。
インド統計・事業実施省(MoSPI)の2024年3月会計年度末データによれば、全1873件中平均して779件(41.59%)が長期遅延にあると指摘されており、遅延プロジェクトの内訳としては、遅延期間1年以内が202件(25.9%)、1~2年が181件(23.2%)、2~5年が277件(35.6%)、そして5年超の大幅遅延が119件(15.3%)平均遅延期間35.4カ月となっています。また、総事業費のうち、18.65%(約5兆ルピー)の追加支出が発生していると報告されています。
日本的「スジ論」と相性最悪なインド的官僚主義
各プロジェクト遅延(と遅延にともなう追加費用)の主な要因は、用地取得問題、環境許可取得の遅延、詳細プロジェクト報告書の不備、契約執行上の問題が指摘されています。インド駐在員の方であれば、「ほーらきたきた」とピンときそうな、インドあるあるのリスクの嵐です。必要な土地取得が進まず、私有地補償紛争が発生し、追加費用の発生するのは日常茶飯事です。
行政では官僚主義が跋扈し、前述の環境当局による許可を例に挙げれば、その審査期間が平均14カ月以上に及ぶなど、許認可の遅延が工期全体に影響してきています。無駄にゆるいところ(サボタージュ)と無駄に厳しい(書類形式主義)ところのアクセルとブレーキの踏み具合がぐちゃぐちゃで、「スジ論」を通そうとする日本人ビジネスパーソンにとっては、インドの行政手続きは身悶えするほどの官僚主義です。
事業者の仕事意識もまたトコトン弛んでいます。詳細プロジェクト報告書(DPR)の設計ミスや不足が、工事実施段階での追加支出および再設計を引き起こします。さらに、公共工事契約の執行遅延、場合によっては法廷手続きが開始されるなどし、平均3~6カ月の遅延が報告されています。

