2026年4月2日(木)

Wedge REPORT

2026年4月2日

 「アタル都市再生・変革計画(AMRUT:Atal Mission for Rejuvenation and Urban Transformation)」は、2015年に現政権与党のインド人民党(印人党)の創設者であるインドの元首相アタル・ビハーリ・ヴァージペーイにちなんで名づけられた政策です。インドの都市部における上下水道、衛生、交通、緑地整備などを改善し、住民の生活の質を向上させることを目的としています。

 しかし現在のところ多くの都市で、計画されたプロジェクトを実施するための十分な資金が確保できていなかったり、地方政府の技術的な専門知識や人材が不足していたりして、プロジェクトの計画・実施に支障をきたしています。最初からカネと人の手配は考えて動けよ、と考えるのが日本人的発想ですが、インドでは毎回「準備不足で支障をきたす」ことが日常茶飯事です。それに輪をかけて、2次的ヒューマンエラーと言いましょうか、官僚的な手続きや複雑な規制により、プロジェクトの実施が遅延するケースが発生します。

 インドの「納期」への無関心さは、まったくもってお話になりません。キッチリとした仕事に心地よさを感じる日本人ビジネスパーソンは、キングフィッシャービールかオールドモンクラムを飲みながら夜な夜な愚痴をこぼすしかないのでありますSir!

道路はガタガタ、鉄道敷設のカネもない

 インド国内の物流では道路輸送が主なインフラとなっていますが、一般道での信号機の設置カバー率も低く、都市部に限らずモラルの低い運転マナーによる交通混雑は非効率な物流を招く要因となっています。渋滞渋滞渋滞60分、ようやく10分走ってまた渋滞といった具合です。

 日本の国土交通省などのデータによれば、中国の舗装道路比率が65%程度とされている一方で、インドは50%未満となっています。実際に都市部でさえ少し中心を離れれば未舗装の道路がむき出しになっています。僕自身の体験として、とあるイベントで某「お偉いさん」が来るとなったら、その一週間前になって突如ガタガタの道路が突貫工事で舗装されたというケースに遭遇し、なんとも言えない行政の都市計画のグダグダさを体験しました。まさに場当たり的なインド式です。100平方キロメートルあたりの高速道路密度は中国が約6.3キロメートル、インドが約1.9キロメートルとなっており、数値的にもインドの相対劣位は明らかです。

 道路輸送が困難ならば鉄道輸送はどうでしょう。現在は輸送の2割弱のシェアに留まる鉄道輸送インフラの潜在的重要性はインド政府も十分に認識をしているものの、旅客ダイヤと兼用している鉄道貨物は単純に輸送容量不足であり、高コストな構造になってしまっています。そのため、専用貨物回廊など政府による積極的投資が顕著な領域でもあります。

 例えば、日本も関わるものとしては2006年に構想が発表されたデリー・ムンバイ間産業大動脈(DMIC)プロジェクトがあります。距離約1500キロメートル、6つの州にまたがる約1000億ドル(約15兆円)の巨大プロジェクトです。高速貨物鉄道、道路、電力、通信インフラの整備だけでなく産業ハブ拠点(スマートシティ)も設置する構想になっています。

 現在進行中の日本国内巨大プロジェクトである品川・名古屋間のリニア中央新幹線の総工費が7兆円以上とされているものですから、それよりコストがかかるDMICはインドにとって大胆な投資と言えるでしょう。DMICへの国際機関融資総額のうち45億ドル分は日本の政府開発援助(ODA)が支出し、日本側が技術協力もしています。

 総工費約1兆2500億ルピー(約2兆円強)のムンバイ・アーメダバード高速鉄道(MAHSR)プロジェクトにおいても、総工費の約80%は日本から好条件の円借款で調達され、日本の新幹線技術が採用されます。ちなみにOECDによれば、日本からのODAの供与相手国(2023年)の第1位はインドでありまして、第2位のバングラデシュを大きく引き離しています。対インド支出総額は37・74億ドルということで、インドに対して貢献度を高めようとする日本側の意志が表れています。


新着記事

»もっと見る