2026年4月9日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年4月9日

 イスラエルから、イランの要人を一挙に攻撃できる機会があること、イスラエルは自分たち単独でも攻撃をする意向であることを伝えられた時、トランプは「イスラエルだけが勝者となる」状況を受け入れることができなかったのだろう。自分こそが勝者として、喝采を受ける立場とならなければいけない。そう思ったのではないか。

結局はトランプの利益にならない

 「成功体験」とは、よく指摘されているとおり、昨年6月のイラン攻撃、本年1月のベネズエラの作戦が思う通りに運んだことであるが、それによって、トランプは、米軍がその強大な軍事力を集結すれば、どんな敵をも圧倒することができると一種の「全能感」を持っていたのではないかと思われる。

 第二期トランプ政権における前記の二つの武力行使については、いくつかの条件が重なった事案について軍事介入を決断したものと理解される。第一は短期でのオペレーションで済ますことができること、第二は勝者の側に立つことができること、第三は世界の耳目を集め、喝采を得ることができること、第四は国内の支持層の中に軍事介入を強く求める勢力があることである。

 しかし、イラン戦争は短期のオペレーションでは済まない状況となっており、トランプ支持勢力の中でも反発の声が出ているので「客観的には」上記のパターンに当てはまらないが、トランプは「主観的には」こうしたパターンに沿って今回の戦争を始めたのだろう。

 イランの要人を一挙に殺害し、主要施設を無力化すれば、イランに勝ち目はない。敗北を認めるか、国内で体制転覆が起こるかのいずれかではないか。そう考えたのではないか。

 甘すぎる見通しであるが、そう判断したのは、「国内問題」との関係で成果を上げる必要性が高く、「イスラエル」との関係で喝采を得ることの誘惑が強かったためと考えられる。

 トランプは自分中心に世界を見ている指導者であり、それがために、自分とは異なった行動原理を持つ者に対する想像力が非常に乏しいように見える。意思決定に際して、自分の利害に従って判断するのはトランプの特質としても、他者の反応に対する理解がお粗末であれば、お粗末な政策決定しかできず、結局は自分の利益にならない。

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