2026年4月5日(日)

山師の手帳~“いちびり”が日本を救う~

2026年4月5日

 こうして私は、夜間頻尿を「歳を取ったから仕方がない」と諦めるのではなく、腎臓の働き、水分循環、食事、睡眠環境、排尿習慣の総合問題として捉え直すようになった。闘病生活の中で学んだのは、身体とは一つの統合されたシステムだということである。がんの手術を受けたからといって、悩みは手術創や検査値だけに限られない。眠れないことが続けば、免疫にも気力にも影響する。睡眠の質は、回復力そのものに関わる。だからこそ、頻尿対策は単なる快適さの問題ではなく、人生の質を立て直すための戦略なのである。

 私はこの研究を、学者のように実験室で行ったわけではない。夜中に何度も目を覚まし、朝に疲れ果て、それでも何とか立て直そうとして、自分の身体を相手に仮説と検証を重ねてきただけである。しかし、実地で学んだ知恵には強みがある。机上の理屈ではなく、眠れぬ夜に裏打ちされているからである。

 頻尿の苦しみは、他人には見えにくい。夜中に何度起きたか、寝付くまでどれほどつらいか、朝どれほど消耗しているかは、本人にしか分からない。だからこそ言いたい。これは改善できる余地の大きい問題である。薬に頼る前に、あるいは薬と併行して見直せることは少なくない。水分の取り方、夕食の時間、排尿の習慣、寝室の環境、足の体液管理。いずれも今夜からできることである。そして、その積み重ねは睡眠を変え、朝を変え、日中の活力を変えていく。

 がんとの闘いは、派手な勝利宣言で終わるものではない。むしろ、こうした夜の小競り合いに一つずつ勝っていくことの総和が、回復という現実を形づくるのだと思う。私が「ガンファイター」として学んだのは、病と闘うとは、命を脅かす大敵に立ち向かうことだけではないということである。眠れぬ夜、冷えた足、遅い夕食、何気ない一杯の茶。そうした小さな伏兵を見逃さず、日常の中に戦略を立てること。それが、長い闘病の末に私がたどり着いた、生きる知恵である。

 だから私は断言したい。頻尿を治さない限り、ガンファイターの戦いは終わらない。 逆に言えば、夜を取り戻せば、朝を取り戻せる。朝を取り戻せば、人生を取り戻せる。

 夜を制する者は、朝を制する。

 朝を制する者は、人生を制する。

 これが、闘病の果てに私が掴んだ、もう一つの勝利である。

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