これまでの原油価格の変動と政策
図は、名目の原油価格(WTI)と実質の原油価格を1970年から現在まで示したものである。原油価格は2008年以降新しい段階に入ったように見える。しかし、実質で見るとそうではなく70年代中頃の水準に見える。
歴史を振り返ると、まず、70年代の原油価格は74年に倍になり、そのままの状況を維持した。79年には再度急上昇したが、その後徐々に下落し、86年には1バーレル20ドル(82~84年価格)の水準に戻った。90年のイラクのクウェート侵攻に対する91年の湾岸戦争時には原油価格はわずかにしか上昇しなかった。
03年のイラク戦争時には上昇したが09年には下落した。10年からのアラブの春とその後の混乱で再び上昇したが、16年には元の水準に戻ったように見える。22年以降はロシアのウクライナ侵攻とともに上昇したがトランプ大統領のイランへの攻撃があるまで、再び実質20ドルに向けて下落していた。
日本の政策を見ると、70年代半ばの第1次石油ショック、70年代末の第2次石油ショックの時には原油価格を価格に転嫁させるという方針が採られた。当時、新価格体系への移行という言葉が聞かれた。それが原油多消費型の化学や鉄鋼産業の縮小と相対的には省エネの自動車や家電の発展につながったとされている。
その後の08年以降の原油価格上昇では、補助金の支払いなどでしのぐようになった。補助金を与えて原油価格を下げたのでは、原油を節約すべき時に使うことになる。このような政策には問題が多いと筆者は思っていたのだが、必ずしもそうではないかもしれない。
どうしたら良いのか
原油価格がこれまでと異なる段階に移るなら、経済構造を変えて対応しなければならない。しかし、原油価格が元に戻るなら、経済構造の変革などしない方が良いかもしれない。これは外的環境の理解とそれに対していつ投資をするのが良いのかという話でもある。
原油価格の恒常的な上昇なら、借金して省エネ投資を行い、エネルギー多消費型の設備をスクラップしたほうが良い。そのための補助金が必要かもしれない。しかし、一時的な上昇なら、無駄な投資を行い、無駄な補助金を払うことになる。
一時的な変化なら価格補助金も要らないという反論があるかもしれない。しかし、一時的変化で企業が倒産すれば、それは企業の設備や人員を無駄にすることになる。価格補助金はその無駄を削減できる。
つまり変化が恒久的なものか、一時的なものかで対応は異なるということだ。過去の原油価格高騰は一時的なものだった。しかし、将来は分からない。価格補助金の無駄と産業構造転換補助金の無駄と、どちらの無駄が大きいかは分からない。ただし、価格補助金は、いつ止めるかが難しい。
一時的かどうかは誰も分からないので、補助金をいつまでも払い続けることになりかねない。実際にそうなっているようだ。

