一方、原油備蓄の放出なら、正しかったどうかは、少なくとも後からなら分かる。原油備蓄は、原油供給が危機的な時、すなわち、原油価格が高い時に放出される。放出された原油は、供給が安定した時、買い増して備蓄量を戻さないといけない。原油価格が安い時に買う訳である。
すると、政府が高い時に売り、安い時に買っていれば、政府は原油価格を安定させていることになる。すなわち、政府の原油備蓄基金が利益を上げていれば正しい政策を行い、逆であれば誤った政策を行っているということである。一方、原油価格補助金であれば、政府が適切な補助金を与えているかは分からない。
同じことは、外為特会にも言える。政府が円高(すなわちドル安)の時に円を売ってドルを買い、円安(ドル高)の時にドルを売っていれば、政府は利益を得て、かつ為替変動をならしていたことになる。故伊藤隆敏政策研究大学院大学教授によれば、91 年 4 月から 01 年 3 月までの為替介入のデータでは、日本の通貨当局はドルをドル価値が安いときに購入し、高いときに売却するという資産運用をしていたとみなすことができる。売買益は、1 兆円近くになる。
さらに、評価益、金利差益をくわえると、10 年間の介入は、9 兆円近くの利益を上げていたことになるという。これは相場を安定的にしていたことになる(伊藤隆敏「日本の通貨当局による為替介入の分析」Discussion Paper Series、A №429、一橋大学、2001年3月11日)。
ただし、その後の、介入期間を71年から18年に拡張した研究では、評価益、金利差益では利益を得られていたが、売買益ではそうでなかったという結果が得られている(Takatoshi Ito and Tomoyoshi Yabu, "Japanese Foreign Exchange Interventions, 1971-2018: Estimating a Reaction Function Using the Best Proxy,” Japanese and International Economies 58, 2020)。すなわち、必ずしも、安い時に買って高い時に売ることはできていなかったということになる。
補助金は良くはない
外的環境変化に対抗するためには、それが一時的か恒久的かを見極める必要がある。しかし、過去なら見極めることができても、将来については分からない。
原油価格高騰が一時的なものなら、一時しのぎの対策の方が良いかもしれない。しかし、それを補助金で行うと、うまくやったのかが分からない。一方、原油備蓄であれば、少なくとも過去については分かる。
また、恒久対策を産業構造転換補助金で行っても、うまくできたのか見極めは難しい。いずれにしろ、補助金政策は良くないと言えるのではないか。
