古川琴音と藤野涼子の無言の演技
ドラマは、魯山人と家を出て行った娘(藤野涼子)の確執と、和解が描かれている。藤野涼子は映画『ソロモンの偽証』(2015年、成島出監督)でデビューを果たし、朝の連続テレビ小説『ひよっこ』などでも若手女優として活躍してきた。演劇女優としての演技もいい。いまや、26歳の中堅となって、本ドラマの演技はその成長の跡がうかがえる。
魯山人の家に勝手にあがりこんで、父が作った陶磁器を鞄に詰め込んで出ていく。たまたま、その場にいた春子(中村優子)との無言の演技は素晴らしい。
じっと相手をみつめて、そして後ろめたい表情を隠しながら去る。道の途中には人品卑しい夫を思われる男が待っている。
使用人の春子は、魯山人に頭をさげてその娘と会うように説得する。しかし、それがたたって、些末なことからクビを言い渡される。魯山人の身の回りの世話を長年にわたって務めてきた春子だったが、静かに去っていった。
ふたりの仲をとりなそうとして、編集者というよりもいまや身内のひとりともなっているヨネ子(古川琴音)は、魯山人に春子に謝って残ってもらうように頼むのだった。
「あんた、誰に向かってものをいっているんや。私は北大路魯山人や。二度と来るな」と、出入り禁止となる。
しばらくして、ヨネ子宛てに「ここに届けてほしい」と、熟した柿が送られてきた。魯山人の庭の柿の木は、娘が生まれた時に植えたものだった。そして、娘(藤野涼子)が好物だった。
ヨネ子が柿を手渡して帰ろうとすると、娘(藤野涼子)が「あのぉ」とその背に呼びかける。
「先生はとてもお元気です」と、ヨネ子は一言。
「お手数をおかけしました」
古川琴音と藤野涼子――筆者の好きな若手女優が言葉少なに会話するシーンは美しい。
