今回の万博の一般来場者は2500万人超を記録したが、70年万博は同じ半年間でそれをはるかに上回る約6400万人が来場。高度経済成長の到達点であり、動く歩道や人間洗濯機など近未来の技術が披露され、万博後の関西の発展への期待は最高潮に達した。だが、現実はそうはならず、70年当時に国内総生産(GDP)の約20%を占めた関西経済は閉幕後から落ち込み、近年は15%程度で推移している。
半世紀にわたる低迷の要因は複合的なものとされ、万博関連工事の押し上げ効果がなくなる中、オイルショックや企業の製造拠点の海外流出、バブル経済崩壊に見舞われたことがある。関西で物流を活性化させるためのインフラ整備が十分でなかったことも大きく、東京一極集中が加速し、関西は首都圏と中部圏の3大経済圏で「負け組」の状況が近年まで続いた。
同じ轍を踏まないため、今回の万博で期待されたのが、会場で紹介された最先端技術の社会での実用化だ。例えば空飛ぶクルマやiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作ったミニ心臓、アンドロイド、人工知能(AI)など、関西を拠点に産業化することで、地元の中長期の経済発展につなげようとしている。
ただ、産業化に向けた議論は進んでいるものの、具体的な成果を挙げているものはほぼないのが実情だ。大阪市中心部の中之島地区では、24年に再生医療の産業化を進める未来医療国際拠点「中之島クロス」が開業したが、大きな潮流を作り出すには至っていない。JR大阪駅北側の再開発地区「うめきた」では、万博を機に金融機関を中心にスタートアップ(新興企業)の支援拠点が続々と開業しているものの、取り組みは始まったばかりで成果は未知数だ。
スタートアップ側からは「人材や資金の調達も有利な東京ではなく、大阪に拠点を置くメリットは少ない」との声が聞かれ、金融関係者からも「大阪で限られたスタートアップのパイの奪い合いになりかねない」と冷静な意見もある。
SNSでは「EVバスの墓場」と揶揄…
万博開幕から1年を前にした今年3月末、万博の〝負のレガシー〟を印象付ける問題も起きた。大阪メトロが、万博で来場者輸送に使用した「EVモーターズ・ジャパン」(北九州市)製の電気自動車バスについて、路線バスなどへの転用を断念することを発表。車体のトラブルが相次いだことから、メトロは「当社が求める安全性を確保することは困難と判断」と結論付けた。
バスは計190台で、路線バスや自動運転バスの実証実験に転用する想定だったが、閉幕後は大阪市内の駐車場にずらりととめ置かれていたことから、SNSでは「EVバスの墓場」と揶揄されていた。
メトロの100%株主である大阪市は3月、市議会での答弁で、大型と小型計150台の購入費は約75億円で、うち40億円超は国と大阪府、大阪市の補助金を充てたと説明。補助金約6億円を交付した国土交通省は一部返還を求める考えを示し、メトロは大阪市に対し、バスの購入に使った国などの補助金を返還する方針を伝えている。
「未来社会の実験場」を掲げた万博で注目された乗り物といえば空飛ぶクルマだが、こちらも実用化に向けた動きは鈍い。
開幕前、大阪府の吉村洋文知事は出演したイベントで「万博のときには空飛ぶクルマが大阪のベイエリアで、普通の人が自転車みたいに乗ってぐるぐる回っているのをやります」と豪語していた。
