戦略はまた、現在約18万5000人であるドイツ軍の兵員数を、26万人程度を目標として抜本的に増加させる必要性を強調する。政府関係者は現役の予備役の数を倍増以上に増やし、20万人規模にすることを希望している。
ピストリウスは社会民主党だが、連立相手の中道右派キリスト教民主党の一部から、ドイツ軍の改革のペースが遅すぎるとの圧力を受けている。議会国防スポークスマンであるエルンドルは、国防大臣に対し、スピードを速めるよう要請した。
メーリングによれば、新防衛戦略の公表部分は、一般的で抽象的で、産業戦略が欠けている。これは、ウクライナとイランの戦争が長期戦を支える産業基盤の重要性を示していることから見れば、驚くべきだ。
同氏によれば、それでも、歴史的にドイツが欧州の防衛で主導的役割を果たすのを避けてきたことから見れば、この戦略は重要な第一歩である。
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防衛における米国離れ
トランプは、戦後秩序を破壊しつつあるが、この記事が解説している内容もその例外ではない。時を同じくして、日独という第二次世界大戦の敗戦国が、防衛政策強化に乗り出したのである。
ドイツは戦後初の軍事戦略を発表し、欧州の防衛で主導的地位を果たすと表明。その一方で、日本は武器輸出三原則の一層緩和に踏み切り、殺傷能力のある物を含む武器の供与で同盟国・同志国の能力強化に努め、同時に、継戦能力強化のための(海外の同志国におけるものも含めた)産業基盤拡充を目指す。
この記事は、公表版のドイツの軍事戦略には「長期戦を支える産業基盤の重要性」を踏まえた「産業政策」が欠けていると指摘しているが、実は、政府の政策の有無に関わらず、民間企業の実態は先行していることを示す記事が、4月19日付ウォールストリート・ジャーナル紙に載っている(「独は兵器産業に変貌中」)。
それによれば、ドイツの自動車産業は、軒並み50%前後の減益を記録し、多数の従業員を解雇しているが、その一方で、武器生産への傾斜を強めている。ドローン用エンジンを製造し、米国生産がほとんどだったパトリオットを、ウクライナ戦争やイラン戦争による在庫不足も背景にドイツで独自生産する動きや、イスラエルのアイアンドーム生産企業との連携などが進んでいる模様だ。また、EUの制度改革を含めて、防衛産業の官民ファンドへのアクセスは大きく改善し、欧州から独の防衛産業に対して多額の投資資金が流れ込んでいる。
