失敗例が成功と誤解させられるグラフ
漁獲量推移は実際の資源量推移とほぼ同じといっても過言ではありません。
下の左のグラフは、北海道のスケトウダラ(日本海系群)の漁獲量推移を示しています。漁獲可能量(TAC)と実際の漁獲量は24年47.3%、25年47.5%と5割を切っています。これでは、100%の消化率が当たり前の米国のTACとは似て非なる運用です。
獲り切れないTACの設定は、幼魚まで根こそぎ獲ってしまう成長乱獲を起こしてしまう温床となっています。左のグラフを見ていただければ、漁獲量の回復には程遠いことは誰が見てもわかります。
ところが右のグラフをご覧ください。青の資源量推移のグラフを見ると、まるで資源量が大幅に回復しているように見えてしまいます。獲り切れない漁獲枠設定で、水産資源が回復することはまずありません。
同じようにこれまで、マサバ(太平洋系群)の資源量がまるで回復しているかのような発表がありました。筆者はWEB上で、マイワシがたくさんいるからサバが寄り付かないとか、マイワシがたくさんいるからサバが底の方にいて巻き網が届かないから獲れないといった情報が、誤りであることを発信してきました。根拠としては、日本の漁船と同じ漁場で漁獲している、数百メートル先でも漁獲できるロシアのトロール漁船も同様に不漁であること、またマイワシはサバのエサであり、エサにサバが近づかないなどです。
数年後に実態に応じて資源評価は大きく下方修正されました。しかしながら、いないサバがたくさんいるといった推測は、獲り切れない漁獲枠の根拠となっていき、マサバ(太平洋系群)は獲り過ぎでほとんど獲れなくなってしまいました。まさにミスリードによる水産資源を崩壊させてしまった人災の一例です。
漁業を成長産業にしている国々では、日本のように獲り過ぎにつながる楽観的な措置を取りません。資源量が少ないと見込まれた時は「予防的アプローチ」を取って資源回復に努めます。
例えば、日本でおなじみのアイスランド産のシシャモ(カラフトシシャモ)は24年に予防的措置を取って禁漁措置が取られていました。その後25年に9000トン、26年に20万トンと資源も漁獲量もV字回復しています。獲ろうと思えば、数万トンは容易に漁獲できましたが、3月15日の時点で95%の確率で11.4万トンの親シシャモ(産卵親魚)が残っていることが条件になっているためでした。
日本では昨年(25年)のスルメイカが悪い例ですが、予防的アプローチどころか、「イカがいるのになぜ獲れない!」と騒ぎになって政治家へ要望が漁業関係者から上がり、水産庁に圧力をかけて2回も増枠してゴールポストを動かしてしまいました。


